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人生100年時代の「副業(複業)」ってなに? メリット・デメリットについても解説!

倉持鎮子
イラスト
ヤマモトミツノリ
UPDATE
2024/07/31/
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物価高に対し、賃金が追いつかない状況のなか、副業(複業)を解禁する企業や自治体も増えてきました。年収が頭打ちといわれる今だからこそ、将来のライフプランを見据え、本業以外の収入源としての副業(複業)に興味を持つ人も増えています。そこで今回は、無理のない副業(複業)の始め方や人生を豊かにするための副業(複業)についてご紹介。「複業家のパイオニア」として知られる中村龍太さんに話を伺いました。

まずは副業(複業)の基本的なことをおさえよう!

──そもそも副業(複業)とはどんなもので、どんな目的があるのでしょうか?

「副業」とは、本業がある上で、ほかにも仕事をして収入を得ることをいいます。私の場合、違う漢字をあてて「複業」と表現しています。副業を補佐的・二次的な位置付けにせず、並列なものとする考え方です。副業と複業はこんなふうに比較することができます。

副業と複業

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従来の副業の主な目的は、「食べるため」でした。となると、あくまでも「収入」を得られる業務しかやる意味がなくなってしまう。それに対して「複業」は、すべての業務が並列にあり、食べるためと稼ぐため以外に、「自分らしい個性的な経験を積む」という目的が加わります。すると、目的が収入に限られず、価値創造活動のすべてが含まれるようになります。仕事に「価値を創造する」という大切な意義が加わります。

──龍太さん自身の今の働き方と副業(複業)を始めた経緯について教えてください。

まずは会社員として週4日、「サイボウズ株式会社」に出勤しています。月・土・日は、千葉県印西市でフリースクールの運営や自営農業、パエリア料理教室も手掛けています。また、フリーランス協会という組織にも所属しており、こちらでは主にネットで仕事をしています。

副業(複業)をするようになったきっかけは、サイボウズに転職するときに給与が減ってしまったこと。やはり収入面は大きかったですね。でも、サイボウズは複業採用を実践していて、「他の団体や組織で働いてみるのはどうですか?」と逆に提案いただいたんです。もちろん、それだけでなく、副業(複業)することで人的資源、スキルや経験が得られることにも魅力を感じました。勤務先以外の新たな組織に所属すると、それまでとはまったく異なる人脈を得られます。私の場合、サイボウズに勤務しながらも、それまで関わりのなかった農業分野の人脈が構築されて世界が広がり、非常に充実した楽しい副業(複業)となりました。

副業(複業)を始めるための3つのステップ

副業(複業)を始めるための3つのステップ

──実際に副業(複業)を始めるためにはどうすればいいでしょうか?

ネットで仕事を探すのもいいのですが、そうすると仕事の枠は既にできあがっていて、やりたいことの幅が狭くなってしまいます。仕事は「完成」と「成果」を求めますが、そうではない中間的なことでも仕事になるかもしれない……と思うほうが、個人ができることは多いですね。

副業(複業)の始め方をまとめると、以下のステップとなります。それぞれ説明していきますね。

ステップ①身近で必要とされていることについて情報収集する
ステップ②自分の好きなこと、やりたいことを周囲に発信する
ステップ③自分が提供できるサービスや商品の料金形態を決めて発信する

ステップ①身近で必要とされていることについて情報収集する

まずは、情報収集から始めましょう。これは、「自分にできることはあるか?」という視点よりももっと広く考えて、「どんな仕事が求められているか?」を探すようなイメージです。

たとえば犬を飼っている人が、散歩好きな人を毎日見かけて、「手が回らないときに犬の散歩を任せられないかな?」と思いつくとします。そうなると、なんらかの報酬が発生し、仕事に発展する可能性は十分にあって、相手が仕事をつくりだしてくれるわけです。周囲にアンテナを張ることで、本人にはわからない需要が見えてくる瞬間とも言えます。

ステップ②自分の好きなこと、やりたいことを周囲に発信する

その次は、「こんな副業(複業)をしたい」ということを周囲の人々に具体的に発信することです。転職するときも、エージェントに対してどんな仕事をしたいか伝えますよね? それと同じです。人脈を利用して行動を起こすことで、仕事やお金につながることは大いにあるので、会社の人や地域の人、友人・知人などにはどんどん「好きなこと、やりたいこと」を広めていきましょう。

自分が好きなことをできるだけ他人に見せておくことは、とても重要なんです。私も「パエリアをつくるのが好き」ということを周囲に発信していたからこそ、「食べてみたい」「じゃあ今度うちでもつくってくれない?」というふうに一事業の料理教室に発展したわけです。

ステップ③自分が提供できるサービスや商品の料金形態を決めて発信する

ステップ①、②を経て、ある程度事業の輪郭が見えてきたら、料金形態を決めましょう。ただ、料金を決めただけでは人は集まりませんよね。なので先ほどの例でいうと、「犬の散歩を代わりにやります」といったチラシなどを作成し、発信することが大事です。会社員の方は慣れないことで最初は緊張するかもしれませんが、実際に何回かやるうちに、自分が使う時間や労力、道具などを含め、「見積り」のようなものがつくれるようになります。ここまで来ればもう副業(複業)と言えますよね。

人気の副業(複業)にはどんなものがある?

──身近なところで副業(複業)が生まれるのは盲点でした……! とはいえ、最初から実践するのは難しいと思う方に向けてお聞きしたいのですが、近年、人気のある副業(複業)にはどんなものがありますか?

20〜30代の若い世代だと、ネット販売をはじめ、アフィリエイトやブログによる広告収入が人気です。なかにはフリマアプリなどで不要なものを売ることからはじめて、個人輸入のような大きな取引にまで発展させる人もいますね。

一方、30代後半から40代後半以上の既にある程度のキャリアを積んだ方々は、ライティングやデザイン、翻訳、プログラミングなどいわゆるスキル系と呼ばれるものが人気です。自身の経験を生かしたコンサルティング業など、ノウハウを教える側に立つ人もいます。フリーランス協会の方々は誰もが副業(複業)をしているので、ご自身の得意な部分を活かしているケースが多いですね。さらにキャリアを積んだ50代ともなると非常に多彩で、それぞれの専門分野など、コアな職種に細分化している印象です。

副業(複業)をするメリットとデメリットは?

副業(複業)をするメリットとデメリットは?

──金銭的なことはもちろんですが、副業(複業)するメリットにはどんなものがありますか?

大きく次の3つがあると考えていて、順番に説明しますね。

メリット①お金の余裕が生まれる
メリット②本業の職場から越境することで、客観的視点ができ、視野が広がる
メリット③節税ができる

メリット①お金の余裕が生まれる

当然ながら、本業とは別に新たな報酬を得ることでお金の余裕が生まれます。たとえば私の場合、いくつかある 副業(複業)のどれかがダメになっても他の仕事があるから、リスクを分散できています。リスクの分散という意味では、iDeCoや投資信託もやっています。事業だけではなく、資産運用も含めての分散ですね。私はこうした資産運用も「小さく始められる副業(複業)」と捉えています。

メリット②本業の職場から越境することで、客観的視点ができ、視野が広がる

ジャンルを超えて仕事をすることで、今まで自分が所属していた職場を客観的に見られるようになります。やっているときはわからなかった良いところも悪いところも俯瞰して見えてくる。これは、専業に戻ったとしても新たな会社に転職したとしても、きっと役立つものでしょう。広く社会的に見れば、雇用の流動性にもつながる考え方です。

メリット③節税ができる

パエリアづくりでいうと、趣味のままであれば、欲しかった本場スペイン製の高価なパエリア鍋も自費ですが、パエリア教室として事業化したことで設備投資として経費にできるようになりました。このように個人的な趣味だと経費にはなりませんが、個人事業主として副業(複業)をする場合、その事業に必要な経費として計上することが可能となります。青色申告で経費として計上することで、法律の範囲内で課税対象となる所得額を抑える節税効果が見込まれるのです。

副業(複業)をするにあたって注意すべきこと

副業(複業)をするにあたって注意すべきこと

──実際に副業(複業)を始めるとき、気を付けるべきことについて教えてください。

いくつかあって、まとめると以下になります。

  • 副業(複業)が可能かどうか、事前に会社への確認・報告を怠らない
  • 開業届を出すかどうか決める
  • 本業と副業(複業)の時間や労働力のバランスをとる
  • 情報漏洩には十分に注意する

まず、会社員の方は副業(複業)が可能かどうか、勤め先に確認してください。また、事業規模が大きくなれば「開業届」を出す必要があります。ただし、開業届を出すと失業手当ての対象外になってしまうため、注意してください。

小さな仕事を「事業」と考える目安としては、確定申告が必要になる年間所得20万円が目安になります。税務についてもある程度知識があるほうがいいので、最低限の勉強は必要です。そしてなにより、副業(複業)を始めると、より多くの時間や労働力といったリソースを割くことになり、自分の時間がなくなっていくので、上手にバランスをとる必要もあります。

──その中でも、龍太さん自身が特に気を付けていることはありますか?

情報の取り扱いには十分注意するようにしています。例えば、会社員として勤務するサイボウズではITを取り扱っていて、副業(複業)では、私が持っているITやIoT技術を利用して、スマート農業を手掛ける企業とニンジンの生産性を上げる事業をしています。

一般的に公開されている情報や自分の持っているITやIoT技術を使うのはいいですが、当時、複業をしていた企業でのニンジンの栽培のノウハウなど、本業、副業(複業)も含めて、所属している組織の秘密情報と定義されているものを使ってしまうと、情報漏洩になりかねないということです。これはどうかみなさんも意識しておいてください。勤務する会社の情報を自分の事業に使うのは、やはりアウトです。

また、どこかひとつで失敗してしまうと、すべての事業のお客様に報告や説明をしなければならない事態にもなり得ます。だからこそ、それぞれの事業をていねいに取り扱える範囲で進めることがベストですね。ただ、万一そのようなトラブルがあったとしても、日頃からきちんとコミュ二ケーションが取れていれば関係は壊れません。本業の職場へはもちろん、副業(複業)先の仕事関係者への事前の報告を怠らず、ていねいにコミュニケーションを取ることで防げるトラブルはたくさんあります。

──最後に、副業(複業)をしたいと考える方々へメッセージをお願いします。

私は、「副業(複業)をするべき」と発信しているわけではありません。あくまでも選択肢のひとつであって、専業を否定しているわけではありません。一カ所に注力して働くのは効率がいいですから、そのほうが合っている方は、それで十分です。ただ、そこを出発点に別の業種にチャレンジしたいと思う方々に対しては、ぜひ一歩を踏み出し、副業(複業)によってもっと世界が広がるよ、とお伝えしたいですね。

──龍太さん、有用なお話をありがとうございました。副業(複業)によって、これまでよりも視界が広がり、今後のキャリアプランの展望も開けてきそうです。また、趣味の幅を超えて事業化することで、節税メリットがあることにも魅力を感じました。精神的にも金銭的にも余裕が出てきたら、自分の将来のために資産運用もぜひ検討していきたいと思います。

◾️副業(複業)で余裕が出たら資産運用がおすすめ。第四北越銀行のNISAは?

【教えてくれた人】中村 龍太/複業家(コラボワークス、サイボウズ、自営農業)
複業家。サイボウズ株式会社所属。自営農業、コラボワークス代表としても事業を複数展開。「複業」の本質的な考えを伝えるため、各自で講演も行う。著書「多様な自分を生きる働き方」(エッセンシャル出版)。

中村 龍太さん

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