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妊娠・出産で費用はいくらかかる? 子どもがほしいと思ったら考える、お金のはなし

阿部桃子
イラスト
オオカミタホ
UPDATE
2022/05/16/
妊娠・出産で費用はいくらかかる? 子どもがほしいと思ったら考える、お金のはなし

妊娠・出産にまつわるお金って、初めて経験する人にとっては未知の世界ですよね。この記事では、妊娠が分かった方やこれから妊娠を望む方に向けて、妊娠・出産にかかる費用や産休・育休時にもらえるお金について、4児の母でもある新潟市在住のファイナンシャルプランナーの山際澄子さんに教えてもらいました。
2022年10月より始まる男性の産後休暇についても解説しています。

妊娠・出産で必要なお金、もらえるお金

悩んでいる女性のイラスト

――妊娠・出産にはとにかくお金がかかるイメージがあります。まず妊娠中はどのくらい費用が必要になってくるのでしょうか?

妊娠中は、ママと赤ちゃんの健康状態を確認するため、産婦人科で妊婦健診を受けることになります。ここで注意したいのは、妊娠は病気ではないので自費診療になるということ。つまり、通常の病気やケガの時のように、健康保険証を出して3割負担とはならないということです。

――となると、相当な負担になりますね

妊娠したかどうかを確認する初診代(約1万円)は自費になりますが、母子手帳の交付とともに妊婦健診クーポンのようなものが支給されますので、基本的な検査はほとんどクーポンで賄うことができます。

新潟市では最大14回分助成してもらえます(※)。
※ 自治体により内容は異なります。

――基本的な検査以外となると、どんなものがあるのでしょうか?

有料で受けられる、妊婦健診の目安(新潟市の場合)

検査項目
妊娠7週 クラミジア検査
妊娠16週 血栓有無検査(Dダイマー ※1)
妊娠35週~ 胎児心拍計検査(NST ※2)

※1 Dダイマー:血栓から放出される物質。この値を測ることで、血栓の有無を確認できる。
※2 NST:ノンストレステストの略。胎児と母体にストレスをかけずに、胎児心拍数と子宮収縮を調べる検査。

また病院によっては3D/4Dの超音波(エコー)検査を都度実施し、録画したデータを無料〜2,000円くらいで渡してもらえるところもあるようです。

――では、妊娠中はさほど大きな出費はないと考えていいのでしょうか?

そうとも言えません。
妊娠中は重いつわりや妊娠中毒症、切迫早産で入院してしまうこともあります。1~2日で退院できる場合もあれば、何カ月も入院するケースも。入院費用は病院や入院中の治療内容によっても異なりますが、例えば公立の病院に30日間入院した場合、入院中の食事代や諸費用で15万円ほどかかったりします。
それに、個室を希望した場合、これのほかに差額ベッド代がプラス20万円ほどかかります(30日間入院の場合)。

――相当の金額になりますね。

ただし高額療養費制度(※)がありますので、差額ベッド代は制度の対象外となりますが、入院治療費の15万円については全額を負担しなければならないわけではないので、安心してください。

※1カ月にかかった医療費が一定額を超えたらその超えた分が支給される制度。医療費の上限は所得により異なる。

――こんなご時世ですし、個室を希望される方が多そうですが……。

何かあったときの長期入院の場合に個室を希望されるのなら、万が一に備えて医療保険に加入しておくといいですね。

▼妊娠・出産だけでなく、女性特有の病気に備える意味でも、医療保険に加入していると安心です。
子宮内膜症は20代、乳がんは30代で増加! 女性特有の疾患にどう備える?

――なるほど。出産についてはいかがでしょうか? どのくらいお金がかかるのかを教えて下さい。

病院や分娩方法によっても異なりますが、新潟県の自然分娩時の平均的な出産費用は、約50万円です。全国平均が約51万円ですので、全国的にみても平均的な金額感だといえます。

帝王切開術は、健康保険の3割負担が適用されるため、自然分娩より安くなりますが、入院期間が長くなるため、結果として自然分娩よりも出産費用が高くなるケースもあります。また、個室を選択した場合、差額ベッド代がかかります。

――となると、50万円くらいは準備しないと!

ただし、出産育児一時金として以下の金額が健康保険組合から支給されます。

支給要件 支給金額
妊娠22週以降かつ、国内での出産の場合 42万円
(産科医療補償制度の掛金相当額1万2,000円を含む)
妊娠22週未満の出産、または海外での出産の場合 40万8,000円

――それは助かります。受け取れる時期はいつ頃でしょうか?

事前に資料を揃えて請求することで、健康保険組合から出産する病院に直接支払われ、出産費用から出産育児一時金を相殺してもらえる「直接支払制度」があるため、あらかじめ50万円程度の高額の出産費用を用意しなくても大丈夫です(直接支払制度の医療機関を利用する場合のみ)。

さらに、出産で会社を休んだ場合には出産手当金を受け取ることができます。これは、勤務先の健康保険に1年以上継続して加入していること等が条件になりますが、出産を機に退職した人も、退職後6カ月以内に出産したときは支給されます。

金額は標準報酬日額の3分の2。月給20万円の方が、産前6週前から産後8週まで98日間産休を取得した場合は、約43万5,000円受け取ることができます。

ただ、「出産育児一時金」「出産手当金」ともに健康保険組合に申請が必要になります。忘れずに申請して、しっかり受け取ってくださいね。

妊娠・出産にともなう補助金のグラフ

産休・育休ってどうなってる?

――続いては、産休・育休について教えて下さい。

産休・育休は、正社員、パート社員、派遣社員、契約社員、アルバイトなど、雇用形態に関係なく取得が可能です。同じ勤務先で1年以上勤続し、子どもの1歳の誕生日以降も勤続の意思があること等が条件になります。

期間については、産前休業は出産予定日の6週間前、公務員は8週間前から、多胎児の場合は14 週間前から取得することができます。

産後休業は出産翌日から8週間まで。育児休業は産後休業(8週間)後から子どもが1歳を迎える前日まで。でも、保育園に入れなかった等の事情がある場合は、最長2歳を迎える前日まで延長が可能です。

なお、公務員は最長で子どもが3歳になる前日の誕生日まで育休を取得できます。

休業期間の図表

――育休中もらえるお金はありますか?

雇用保険から育児休業給付金が支給されます。育児休業開始日前に雇用保険の被保険者期間が12カ月以上あることや、育児休業後も同社で勤続する意思がある等の条件があります。

金額的には、取得開始月から6カ月までは月給の67%、7〜12カ月までは月給の50%が支給され、育休を延長した場合も延長期間中は月給の50%を受け取ることが可能です。

――受け取るためには、申請が必要でしょうか?

はい。まずは育休開始時に申請が必要です。期限もあり、育児休業開始日から4カ月経過後の月末までに申請しなければなりません。振り込みも、申請してから2カ月くらいかかります。それ以降も育休期間中は2カ月ごとに2カ月分をまとめて申請することになります。

また、育児休業を延長する場合、延長手続きを行わねばなりませんが、同時に育児休業給付金の申請も忘れないように!

――やはり手続きは複雑ですね。しっかりやらないと。

そうですね。勤務先の総務や人事の方がいろいろと手続きについて教えてくれますので、もし心配な場合は先に相談してみるといいかもしれませんね。

●住民税のみ支払い義務あり!産休・育休中の取り扱い

分類 項目 取り扱い 支払い
社会保険料 健康保険 免除 なし
厚生年金 免除
雇用保険 発生しない
税金 所得税 発生しない
住民税 発生する あり

さらに覚えておくといいのが、社会保険料や税金など、産前・産後は支払いが免除されるものもあるということ。

住民税は免除されませんが、事前に各市町村に手続きすれば、1年以内に限って猶予してもらえる制度もあります。

また税金といえば、妊娠・出産にかかる費用について、医療費控除を受けることができます。

医療費には、妊婦健診や検査で支払いが発生した分、入院の際に使ったタクシー代、入院中の食事代から、薬局で買った薬なども含まれます。

ただし、還付を受けるには確定申告が必要です。生計を一にする家族のなかで所得税率が高い人が確定申告をしたほうがよいと思います。

こう変わる!産後パパ育休(出生時育児休業)

子育てをしている男性のイラスト

――2022年10月から出生時育児休業(産後パパ育休)がスタートするそうですね。従来の男性育休制度からどのように変わるのでしょうか?

通常の育児休業(生後8週間後から子どもが1歳になるまで)期間に2回分割して育休が取得可能になったことに加え、子の出生後8週間以内(妻の産休中)に4週間までの育児休業が取得できるようになります。この期間内でも2回まで分割して取得できるようになりました。

――最大4回に分けて休みが取れるということですね。

はい。仕事の状況や家庭の事情に合わせて、フレキシブルに育休を取れるようになりました。ただ、原則的に休みを取る2週間前までに申請しなくてはならず、注意が必要です。

さらに、従業員1,000人以上の企業は育児休業などの取得状況を公表することが義務付けられるため、事業主にもより一層育休が取得しやすい雇用環境の整備と、制度の周知が求められるようになります。

――男性も育児しやすい環境が一気に整うといいですね。

産後の一番大変な時期を夫婦一緒に乗り越えた経験は、本当に貴重です。子育てが終わってからも、ずっと夫婦の関係は続くわけですから。ここでしっかりと良好な関係を作っておかないと将来への影響大です(笑)。

また、産後の育児が大変すぎると「もう子どもは産みたくない」と思われる方も多いようですが、パパが一緒に育児をしてママの負担が減れば「また産もう」という気持ちになれますからね。少子化対策にもなるのではないでしょうか。

――そうですね。妊娠出産時のサポート制度も、いろいろと整っていることが分かりました。しっかり活用したいと思います。

あと、出費を抑えるコツとしては、ベビー用品を揃える際に、SNS、フリマアプリなどを駆使しておさがりを手に入れる方法もありますよ。とにかく制度はしっかり活用して、楽しく子育てしていただきたいですね。

【教えてくれた人】山際澄子さん
新潟県在住のファイナンシャルプランナーで金融コンサルタント。プログラマー、専業主婦を経て、2002年よりファイナンシャルプランナーとしての活動を開始。資産運用、投資の基本、相続や贈与等をテーマに、グループセミナーや個別相談を実施している。 新潟在住、4児の母。

山際澄子さん

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