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子どものおこづかいはいつからどうやって渡す?金額は? 家庭でできるお金のお勉強

阿部桃子
イラスト
前田はんきち
UPDATE
2021/08/25/
子どものおこづいはいつからどうやって渡す?金額は? 家庭でできるお金のお勉強

子どもが小学校に上がる頃から、おこづかいを渡す時期や管理方法について気になり始める親御さんも多いかもしれません。今回は、子どものお金に関するセミナーを多数開催しているFPの八木陽子さんに、おこづかいの渡し方のコツや活用方法を教えてもらいました。

おこづかいを渡すタイミングと方法

――まずは子どもが何歳になったら、おこづかいを渡すべきでしょうか?

八木さん:
小学校に入学して、おもちゃのお金と本物のお金の区別がつくようになってきた時点でおこづかいを渡すのがいいと思います。

もちろん最初は少額から。例えば、スーパーなどへ一緒に買い物に行ったとき、200円を渡してその範囲内でお菓子を買う。親子別々のレジでお会計するのもひとつの方法です。
これだけでも、自分の持っている金額の範囲で品物を選び、お金を払い、おつりを確かめる、という練習ができます。

――最初は親子一緒に、少額から始めてお金を使うことに慣れるのですね。

八木さん:
小学校中学年くらいになると、子どもだけで出かけることも増えてきます。そのタイミングで、本格的におこづかい制度をスタートさせるのもいいですね。

渡す方法には、月額制、報酬制があります。

●月額制……毎月決まった日に、決まった金額を渡す。
メリット:毎月同じ金額がもらえるので、子どもがお金を使う計画を立てやすい。
デメリット:月末になれば必ずもらえるので、「お金がなぜ手に入るのか?」ということを学ぶ機会にはなりづらい。

●報酬制……お手伝いをした際に、その内容に応じて決まった金額の報酬を渡す。
メリット:お金は労働の対価であるという社会の仕組みを伝えやすい。
デメリット:おこづかいがもらえないお手伝いはしない!と言い出す可能性がある。

子どものおこづかいは月額制と報酬制があります。

――なるほど。それぞれのデメリットをカバーする方法はありますか?

八木さん:
月額制は、おこづかいを渡すときに、「どうしてこのお金が手に入るのか」「お父さん・お母さんが働いているからだよね、だから大事にしようね」などと伝えることが大切です。

報酬制では、お手伝いは家族の一員として当たり前のことであると伝えること、例えば「ごみ捨てと風呂掃除をするとお金を渡しているけど、洗濯物たたみやお皿洗いも家族の一員としてちゃんとやろうね」と声掛けすることによって、デメリットはカバーできるでしょう。

最初は子どもの反応が薄いかもしれませんが、毎月、とにかく何度でも伝えてみてください。

――月額制、報酬制ではなく、必要なもの、欲しいものがあればその都度渡すという家庭もあるようです。

八木さん:
最初はその都度でも良いですが、徐々に予算内でお金を使う練習ができるよう、おこづかい制を導入してみましょう。
中学生にもなると、子ども同士で映画に行く、その都度2,000~3,000円が必要になるなんてことも出てきます。それが月2~3回にもなるとかなりの金額になりますよね。都度渡していたら、子どもに「今自分が持っているおこづかいが●●円だから、映画は月1回で我慢しよう」といった予算の概念が身に付きにくくなります。

親御さんとしても、「ガチャガチャやシールが欲しい」と言われるたびに、「今回はあげていいのだろうか?」と悩んでいては大変ですよね。おこづかいがあれば、「その範囲内で買おうね」と伝えることができます。

――確かに大人でも、欲しい物があったらその都度お金をもらえる人なんていないですからね。ちなみに八木さんはお子さん(現在大学生)にどんなふうにおこづかいを渡されていましたか?

八木さん:
月額制と報酬制の合わせ技でした。
月額に加え、お手伝いをしたらカレンダーに○を付けていき、○の数が一定数に達したら1,000円がもらえるという方式です。大人の世界でいうと、固定給+成果報酬という感じでしょうか。

この方法ですと、行事が立てこんだり、旅行に行っていたりしてお手伝いができなくても、おこづかいが大幅に減らないという子どもにとってのメリットもありました。

――ちなみにみなさん、おこづかいってどのくらいの金額なのでしょうか?

八木さん:
全国的な平均値で見ると、小学生が毎月約1,000円前後、中学生は約2,500円、高校生は約5,000円となっています(※)。

※「子どものくらしとお金に関する調査2015年度」(金融広報中央委員会)より

どうやって学ぶ?お金の使い方、貯め方

――いざおこづかいを手にしても、使い方が分からないお子さんもいるかもしれません。

八木さん:
例えば文房具。4月の新学期に親御さんが買い揃えてあげると思いますが、数カ月経つとノートや鉛筆を切らすことがあるかと思います。その買い足しを子どもに任せてはいかがでしょうか?

以前「うちの子は消しゴムをよくなくすので、ダースで備えています」という親御さんがいました。でも、【失くしたら子どもがおこづかいで買う】というルールにしたら、ぱたっと失くさなくなったそうです。やはり身銭を切ると辛いですからね。持ち物にちゃんと名前を書くなど、ものを大切にする気持ちも芽生えると思います。

――やはり、おこづかい帳みたいなもので管理すると良いのでしょうか。

八木さん:
そうですね。おこづかい帳を付ける場合には、買ったものが「ニーズ=必要なもの」なのか「ウォンツ=欲しいもの」なのかに分けて管理させるのが良いと思います。

おこづかい帳を付けるときはニーズかウォンツの項目を分けての管理がおすすめ。

――なるほど。ではお金の貯め方に関してはどうでしょうか?

八木さん:
最近は、スマホやゲーム機器等、高額なものを欲しがる子どもも多く、おこづかいを何年も貯めないと買えないという事情があります。でも子どもにとって2~3年って永遠みたいなもの。そうなるとお金を貯める気力がわきません。

なので、そこはハードルを少し下げてあげて。例えば1カ月200円ずつ貯めると約束して、10カ月間続けられたら、親がお金を上乗せして欲しいものを買ってあげる等のルールにすれば、貯める喜びが感じられますね。

――貯める場所は貯金箱でしょうか?

八木さん:
最初は貯金箱から始めるのが良いでしょう。小学校高学年では銀行の仕組みについて学ぶと良いので、そのタイミングで銀行口座を開設して、子どもにお金の管理を任せてみてもいいですね。

我が家は息子が4年生のとき、お年玉をもらったあとに息子名義の銀行口座を開きました。

3万円ほどのお年玉のうち、大半は将来の教育費のために私が預かり貯金し、残りを息子に渡しました。本など好きなものを買ったりしたあと、残りの数千円は、自分の銀行口座に預けていたようです。

――教育費用を貯めるための口座、息子さんのおこづかい用の口座と2つ用意したのですね。

八木さん:
はい。息子にはキャッシュカードも渡しましたが、日々のおこづかいが貯まったらATMに預けに行っていましたよ。家に置いておくと泥棒に盗られたり、お母さんに使われたりするのでは?という心配もあったようで(笑)、銀行に預けておけば安心と思ったみたいです。

――子どもでも自分で管理できるんですね。

八木さん:
一度、暗証番号を忘れるトラブルがありましたが、自分で銀行に身分証明書を持って行って解決していました。大学生になった今もその口座を活用しています。

大学や専門学校進学の際に子どもが家を出るタイミングで「銀行口座の使い方を教えなきゃ」と慌てる親御さんも多いですが、小さい頃から口座の管理をやらせておくと、のちのち楽だと思いますね。

親の年収や貯金をどこまで子どもに話す?

――お金の話は家庭でしにくいという親御さんもいるかもしれません。

八木さん:
お金に興味が出てくると、親の年収や貯金額が気になるというお子さんも多いですね。ただ、小学生だと学校の友だちなどに洗いざらい話してしまうこともあり、難しいところです。

でもせっかくお金に興味を持ったのなら、親御さんの職種やほかの職種の平均年収を伝えてみてもいいですね。「将来どんな仕事に就きたいのかな?」と話し合う機会にもなります。

また、家族旅行にはいくら使ったとか、月々の食費はいくらとか、支出についてはオープンにしてもいいと思います。

――「子どもに何でも買ってあげてしまう家庭」もあり、正しい金銭感覚を身に付けさせるのが難しいと考えている親御さんもいるようです。

八木さん:
子どもの性格や、将来どんなふうになってもらいたいのかを考え、ブレない方針を持つことが大切です。例えばうちはゲームを買わないけど、本はいくらでも買ってあげる、普段は節約しているけど年1回豪華な旅行に行くなど。

小学校中学年以降は子どもなりに話が通じますので、ちゃんと伝えれば、子どもは理解できます。

――ご家庭の方針を伝えるのですね。

八木さん:
冬休み明けの時期に小学校に講演会に行くと、「お年玉はもらったけど親に取られた」という子が多いんです。親御さんはただ教育費を貯金するのではなく、「将来いろいろな進路選択ができるように、ちゃんと貯めてあるから安心してね」と子どもに伝えたほうがいいですよね。

というのも、高校、大学生になったときのお金のトラブルはかなり深刻です。親に内緒で高額なローンを組んでパソコンを買ってしまったとか、家のものを片っ端からフリーマーケットアプリで売ったとか。

我が家のお金の方針についてちゃんと話せる親子関係を築いていれば、親の手が離れたときに大変なことにならないですね。

――親子で話し合うことが大切ですね。

八木さん:
「子どもはお金のことなんて心配しなくていい」という時代から、「お金との付き合い方を考える」という時代にシフトしています。親子でよく話し合い、将来に備えましょう。

まとめ

  • おこづかいを渡す時期の目安は、小学校に入学し、おもちゃのお金と本物のお金の区別がつくようになってきた頃。
  • 最初は親子一緒に、少額から始めてお金を使うことに慣れる。
  • おこづかいを渡す方法には定額制、報酬制がある。
  • おこづかい帳は、買ったものを「ニーズ」と「ウォンツ」に分けて管理させる。
  • 小学校高学年になったら、子ども名義の口座を作って自分で管理させても◎。
  • 親子でよく話し合い、我が家のお金の方針を伝えることが大切。

【登場人物】

【教えてくれた人】八木陽子さん
株式会社イー・カンパニー代表 キッズ・マネー・ステーション代表。ファイナンシャルプランナー。出版社で女性情報誌の編集部勤務を経て独立。FPやキャリアカウンセラーとして10年以上の実績を積み、消費者の視点からも、誰よりも分かりやすく「お金」「経済」「キャリア」を伝える。小中学校で子ども・親子向け講座も開催。『マンガで覚える 図解 おこづかいの基本』(つちや書店)ほか、監修本も多数。

八木陽子さん
第四北越銀行

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