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【2024年10月社会保険適用枠拡大】扶養内となる年収はいくらまで? 社会保険のメリットは?

田下愛
イラスト
オオカミタホ
UPDATE
2023/12/21/
社会保険のイメージ

2022年に続き、2024年10月にも社会保険の適用枠が拡大。これまで家族(配偶者)の扶養内で働いていて保険料の負担がなかった方が、これから勤め先の社会保険に加入しなければならないケースも出てくるでしょう。社会保険に加入するメリットとは? 適用枠拡大を受けて働き方をどう考えていくべき? 社会保険労務士の佐藤麻衣子さんに伺いました。

扶養内で働くときに直面する「年収の壁」とは?

「103万円の壁」は、所得税がかかるかどうか

――配偶者の扶養内で働く人が直面する「103万円」「106万円」「130万円」の年収の壁という言葉があります。これらはどういうものなのでしょうか?

簡単に言うと、「103万円の壁=税金(所得税)の壁」、「106万、130万の壁=社会保険の壁」ですね。
「103万円の壁=税金(所得税)の壁」の103万円というのは、給与をもらっている人が受けられる所得控除55万円と誰もが受けられる基礎控除48万円の合計額。つまり、年収が103万円までなら全額が控除の対象になるので所得税がかからないということで、今回の社会保険適用拡大とは関係しない部分となります。

「106万円の壁」は年収だけで決まらない?

――「106万円」「130万円」の壁は、「103万円」の壁とどう違うのでしょうか?

この2つの「社会保険の壁」は、家族(扶養者)が加入する社会保険の保障を受け、扶養の範囲内で働く(被扶養者)か、一定額の収入を超えて扶養を外れるかどうかの境目です。
まずここで注意してほしいのが「106万円の壁」。

実はこれ、単純に年収が106万超えた=社会保険加入というものではないんです。目安となる年収が106万円というもので、実際は下記の労働条件を満たした人が社会保険加入の対象者となります。

■社会保険加入の条件

  • 特定適用事業所※に勤務している
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が88,000円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

※特定適用事業所とは、1年のうち6ヶ月以上、厚生年金保険の被保険者の総数が101人以上となる企業のこと(2022年10月に改訂)。

――つまり、年収が106万円を超えていても、保険に加入しなくてもいい場合もあるんですね。

そうです。ですから106万円の壁は年収だけでは判断しないことです。そして、「130万円の壁」は、年収が130万円を超える見込みとなったら、106万円の壁にあるような労働条件に関係なく扶養から外れて自身で社会保険に加入することになります。具体的には、給与等の収入がある場合は月額 108,333 円、雇用保険等の受給者の場合は日額 3,611 円を超える見込みとなったタイミングで扶養から外れることになります。

【年収別】税金・社会保険料の支払い有無

【年収別】税金社会保険料の支払い有無

※60歳以上である場合または障害厚生年金を受けられる場合等は、社会保険加入が求められる年収が130万円未満ではなく180万円未満が要件となります。

収入が106万円を越えそうになっても慌てないで! まず勤め先が社会保険適用になる「特定適用事業所」かどうかを確認しましょう。

佐藤麻衣子先生佐藤麻衣子さん

2024年10月より社会保険適用がさらに拡大

――2024年の10月から社会保険の適用枠が拡大。これは具体的にどういうものでしょうか?

2022年に「特定適用事業所」の従業員数の規定がそれまでの「501人以上の企業」から「101人以上の企業」に拡大しました。2024年10月からはそれがさらに拡大して、「従業員51人以上(※)の企業」となるものです。

※従業員数は、「フルタイムの従業員数+週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数」で算出。

――適用拡大が2022年、2024年と続いているのはなぜでしょうか?

背景にあるのは働き方が変わってきていることですね。パートタイムで働く主婦層以外にも、労働時間や給与の少なさで社会保険に入れない非正規社員などが増えてきているので、そうした方を社会保険で守れるように……というのが大きな流れです。

社会保険適用拡大で対象になるのは?

――社会保険適用拡大で影響を受けるのは、どんな方でしょうか?

週20時間以上勤務をしていて、収入基準を超えるパートタイマーや契約社員ですね。「年収106万円超えていたけど、勤め先が特定適用事業所ではないから保険加入していなかった」人が、新たに保険加入対象者になるケースがあると思います。

2020年に法改正された際に今回の適用拡大の影響は65万人~という数字が試算されていますね。

――社会保険適用枠拡大にあたって、自分が対象かどうかを知るにはどうすればいいでしょうか?

次の適用枠拡大が始まるのは2024年10月なので、例えば1年ごとの有期契約などで労働契約の更新が3~4月なら2025年3~4月に、無期契約であれば少なくとも改正の数か月前には対象者の方に勤め先からお話などがあるかと思います。対象となる企業には年金事務所から通知が届いて随時対応していくことになるはずです。

社会保険適用拡大への対応するスピードは、企業によってまちまちになることが予想されます。自分が対象かどうか早めに知りたい場合は、お勤めの企業に聞いてみるとよいでしょう。

佐藤麻衣子先生佐藤麻衣子さん

社会保険に加入するか否か迷う人

社会保険は入った方がいい? メリット・デメリットを解説

――社会保険に加入するメリットはどんなものでしょうか?

社会保険には厚生年金と健康保険が含まれますが、大きいメリットとしては年金が増えること。厚生年金に加入すると年金が上乗せされるので、老後や障害・死亡などのアクシデントがあった時に受け取れる金額が変わってきます。健康保険でも「傷病手当金」や「出産手当金」などがもらえる場合があるので、保障の面では手厚くなるといえます。

――反対に社会保険に加入するデメリットもあるのでしょうか?

一番のデメリットはやはり保険料。勤め先の保険に入ると月々の給与からその分が引かれるので強制的に手取りが減ることになります。また、家族が健康保険組合に加入していたケースなどでは「もともと入っていた家族(扶養者)の健康保険の方が、付加給付が充実していた」となる可能性もありますね。

――勤め先の社会保険に加入した場合、月々どれくらいの負担になるかをあらかじめ知る方法はありますか?

まず、勤め先が加入している社会保険がどこかを確認しましょう。それがわかれば加入先の健康保険の公式サイトなどで料率などを調べられるかもしれません。あるいは、勤め先の総務に「私の給与だと月々の保険負担はいくらくらいになりますか?」と直接聞くのもいいと思います。

企業の社会保険として多いのは、「協会けんぽ(全国健康保険協会)」。こちらであれば、「協会けんぽ 保険料額表」の検索などで保険料などを調べることも可能です。

佐藤麻衣子先生佐藤麻衣子さん

社会保険適用拡大を機にiDeCoを活用

社会保険適用拡大を機に長期キャリアを考えてみよう

10年後を見据える人

――社会保険適用拡大を受けて、「扶養から外れる?どうする?」「保険の負担が増えて手取りが減るからやりくりをどうしよう」など悩む人もいると思うのですが、これからどんな視点で考えていけばよいのでしょうか?

これを機に長期キャリアを考えてみるといいかもしれませんね。例えば、「子どもが小さいから長い時間働けない」という人も、お子さんが中学生になったら時間が空くし、教育費などのために働きたくなるかもしれません。

その際にいきなり正社員になるのは大変なので、パート勤務から労働時間を少しずつ増やして無理なくキャリアを戻すのはいかがでしょうか。

社会保険に加入したときに短期で見たら損した気になるかもしれません。でも、将来の年金額が上乗せされるメリットなどもあるので、この機会に働くことや家計のやりくりに対して中長期の視点で見るようにしていくのもいいと思います。

――老後を見据えて、将来のお金を増やしていきたいと考えた場合に、社会保険の加入はプラスになるということはわかりました。他に何か増やす手立てはありますか?

iDeCoはいかがでしょう。働く時間を増やして収入が上がると税負担も増えてきます。iDeCoは最低額5,000円から運用商品で積み立てができて、掛金は全額所得控除となるため節税効果が期待できます。60歳以降に給付金を受け取ることができるので、老後資金を作るという点で非常に役立ちます。

▼iDeCoについて、詳しくはこちらのページをご覧ください
iDeCo(確定拠出型年金)って何? いまさら聞けないメリットを詳しく解説

iDeCoには「強制力」があります。良くも悪くも60歳以降まで引き出せないので、「長期運用をする」という確固たる枠組みを作れて、自然と先々のお金に目を向けるきっかけにもなってくれると思います。

社会保険適用拡大は、先々のお金やキャリアに目を向けるチャンス。教育費や住宅費などライフプラン資金を視野に入れて中長期で働き方も考えてみましょう。

佐藤麻衣子先生佐藤麻衣子さん

【教えてくれた人】佐藤麻衣子さん
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。労務管理とライフプランを専門分野とする人事コンサルタント。法人向けに仕事と生活を両立するための労務コンサルティング、企業型確定拠出年金の導入、各種企業研修を提供するほか、執筆・講演活動も行う。

佐藤麻衣子先生

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