税負担を軽減しながら老後の効率的な資産形成ができる「iDeCo(イデコ)」。以前は「50歳を過ぎてからでは遅いのでは……」と加入を諦めていたかたもいらっしゃったかもしれません。しかし、近年の制度見直しにより、50歳以上のかたや企業型確定拠出年金(企業型DC)のある会社で働くかたもiDeCoのメリットを十分に享受できるようになっています。
今回は現在のiDeCoのルールや2026年12月の制度改正のポイント、50代で運用を始める際のコツについて、ファイナンシャル・プランナーのゆりもとひろみさんに聞きました。
50代からでも遅くないって本当? 今までのiDeCoをおさらい
iDeCo(確定拠出型年金)とは、老後の資産形成のために国が設けた私的年金制度です。「自分年金」ともいわれ、毎月決まった掛金を拠出して運用することで、原則60歳以降に掛金と運用実績の合計額を受け取ることができます。
掛金は月に5,000円から積み立てることができ、上限については職業やお勤め先が企業型DCに加入しているかどうか、などによっても異なります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
iDeCo(確定拠出型年金)って何? いまさら聞けないメリットを詳しく解説
過去にiDeCoは、「50歳を超えてからの加入は遅い」といわれていた時期がありました。その理由として以前は、給付を受けるには原則「通算加入期間が10年以上必要」なうえに、「掛金の拠出可能期限(加入年齢期限)は60歳まで」と決められていたからです。
通算加入期間が10年に満たないかたは、60歳になっても給付は開始されず、翌年以降に先送りとなり、しかもその間、新たに掛金できないという、いわゆる「iDeCoの空白期間」がありました。
しかし高齢期の就労拡大や老後資金の確保といった背景から、制度が見直されました。積み立てられる年齢などが延長されたことで、現在では50歳以降にiDeCoに加入したとしても、空白期間が生まれにくくなっています。
もっと利用しやすくなる! iDeCo3つの改正点をチェック
iDeCoの新制度は、段階的に施行されます。

拠出限度額が引き上げられる
2026年12月からは、iDeCo全体の拠出限度額が引き上げられます。
自営業者など(第1号加入者)と国民年金に任意で加入しているかた(第4号加入者)は月額6.8万円から月額7.5万円へ、会社員や公務員など(第2号加入者)は企業年金等との合算枠が月額5.5万円から月額6.2万円へと拡大します。

※経過措置として2029年11月までは、上記要件に該当しない60歳以上70歳未満のかたについても、新たにiDeCoに加入できます。
出典:厚生労働省ホームページ「2025年の制度改正 iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げ(2026年12月1日施行予定)」、政府広報オンラインホームページ「iDeCoが大きく変わる! 2026年12月制度改正のポイントを分かりやすく解説」
これまで以上に手厚い老後資金作りが可能になるだけでなく、掛金が全額所得控除になるというiDeCoのメリットの恩恵を、より大きく受けられるようになります。
積み立てできる年齢が延長される
これまで掛金を積み立てできる年齢は「65歳未満」でしたが、2026年12月からは「70歳未満」へと延長されます。(※老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受給していないことが条件となります)。
これにより、たとえば55歳の誕生日にiDeCoを始めたかたでも、15年間、掛金を拠出できるようになりました。

これまで(2026年11月まで)、iDeCoに加入できるのは、国民年金の被保険者であることが前提でした。
そのため、個人事業主のかた(第1号被保険者)や専業主婦(夫)のかた(第3号被保険者)は、原則として60歳で国民年金の被保険者ではなくなると、iDeCoへの加入は認められませんでした。
2026年12月の制度改正では、新たに「第5号」というiDeCoの加入区分が設けられます。
第5号加入者は、以下のようなかたが該当します。
- 国民年金の被保険者ではない60歳以上70歳未満のかた
- そのうち老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないなど、一定の要件を満たすかた
これにより、これまで60歳でiDeCoへの加入資格を失っていたかたであっても、一定の要件を満たせば60歳以降も70歳未満まで加入・掛金拠出ができるようになります。
加入年齢の上限が70歳まで引き上げられることで、たとえば55歳でiDeCoを始めたかたでも約15年間、60歳から始めたかたでも最長10年間、掛金の拠出が可能です。
企業型DCとiDeCoの併用枠が拡大! 関連するマッチング拠出の制度改正も
企業型DCとiDeCoの併用はすでに原則可能となっていますが、2024年以降、さらにルールが改善されています。
2024年12月には、確定給付企業年金(DB)に加入している会社員や公務員のかたの iDeCoの掛金上限額が、一律「月額2万円」に引き上げられ、対象となるかたの利用枠が広がりました。さらに2026年12月の改正によって、企業型DCとiDeCoを併用する際の合計拠出金額も月額5.5万円から6.2万円へと増えることになります。
また、関連する制度改正として、2026年4月には企業型DCの「マッチング拠出(従業員が掛金を上乗せする仕組み)」のルールが変わり、使い勝手が向上しました。これまで「従業員の掛金は会社の掛金額を超えてはいけない」という制限がありましたが、これが撤廃され、限度額内であれば会社側の拠出額が少なくても、自分でしっかりと上乗せができるようになっています。
ただし、基本的に企業型DCでマッチング拠出を利用する場合は、iDeCoとの併用はできません。両者では運用商品や手数料、転職時の取り扱いなどが異なるため、勤務先の企業型DCの内容やライフプランにあわせて選ぶことが大切です。

出典:厚生労働省ホームページ「2025年度の制度改正 iDeCoの加入可能年齢の引き上げ(2026年12月1日施行予定)」、「確定拠出年金制度の概要」
加入可能期間に合わせた商品選びを
2024年から2026年にかけての制度改正で、50歳を過ぎてからのiDeCo加入のハードルはさらに下がり、拠出枠も大きく広がります。ただし、投資先商品は、より計画的に選ぶ必要があります。
たとえば、20年、30年と運用期間が残されているかたであれば、たとえ一時的に資産が減少したとしても、時間をかけて取り戻すことができます。しかし50代から運用を始める場合、加入期間が70歳まで延びたとはいえ相対的には運用期間が短いため、もし受給前に、大きな金融ショックが起きてしまうと、損失分を取り戻すのが難しくなります。
老後の資産形成が目的なのであれば、ハイリスク商品には手を出さないなど、加入可能な期間とリスクを考慮した商品選びをしましょう。
また、iDeCo以外の積立型の資産運用としては、NISAを活用した投資信託の積立購入がおすすめです。NISA枠での投資は、運用益が非課税になります。iDeCoとの大きな違いは、好きなときにお金を引き出せることです。
老後のための資金はiDeCoで固く守りつつ、数年後に使うかもしれない資金はNISAで柔軟に運用する、というハイブリッドな戦略を検討してみてください。
さらに空白期間中も口座管理手数料がかかってしまうので、50歳以上でiDeCoを始めるのはメリットが少ないとされていました。
