2024年に新しいNISA制度がスタートしたことをきっかけに、つみたて投資枠で投資を始めた方も多いのではないでしょうか。商品の値動きを体感したり、投資をしたりすることの楽しさを少しずつ感じてきた方もいるかもしれませんね。
ところでNISAには、つみたて投資枠の他にも「成長投資枠」という枠がありますが、成長投資枠は投資に慣れた人がつかうイメージがありませんか? そこで今回は、「成長投資枠ってどういう風に使うの?」と疑問に思っている方や、「もう少し踏み込んだ投資に挑戦してみたい」という方に向けて、成長投資枠の特徴や商品の選び方のコツをファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに伺いました。
NISAの成長投資枠とは
――NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がありますが、両者にはどんな違いがあるのでしょうか?
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は共にNISAの非課税投資枠です。また「非課税保有期間」が無期限であることや、対象年齢が18歳以上であることは同じですが、1年間に投資できる上限金額や、非課税で保有できる限度額、投資できる商品などに違いがあります。
――成長投資枠の「年間投資枠」は、つみたて投資枠の倍になるんですね!
そうなんです。つみたて投資枠と成長投資枠は併用することができるので、つみたて投資枠で積立投資を継続しながら、自由なタイミングで成長投資枠を使えば年間360万円の投資が可能になります。
――なるほど、それでは非課税保有限度額はどうでしょうか?
非課税で保有できる上限金額は1,800万円ですが、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までと決まっています。つまり、限度額全てを成長投資枠でつかうことはできないということです。そのため成長投資枠を活用しながら、限度額いっぱいまで使い切りたい場合は、必ずつみたて投資枠を利用する必要があるのです。
――表を見ると投資対象商品も変わっていますね……どんな違いがあるのでしょうか?
つみたて投資枠の対象商品は、長期の分散投資に適したと金融庁が認める一定の商品がセレクトされています。一方、成長投資枠ではつみたて投資枠の商品に加えて、上場している株式やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、株式投資信託など幅広い商品を購入することができます。もちろん、成長投資枠でつみたて投資枠の商品を買うこともできますよ!※
※つみたて投資枠の全ての商品が成長投資枠で購入できるわけではありません。
つみたて投資枠と成長投資枠、どっちがおすすめ?
――まだNISAで投資を始めていない方は、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」どっちを選択するか迷われる方もいるかと思います。選ぶ基準はあるのでしょうか?
新しいNISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる点が大きなポイントでもありますが、まず基本的には「つみたて投資枠」をつかって積み立てるのがおすすめです。
コツコツと少額から中長期的に資産形成ができるので初心者の方にも向いていますし、一度投資を始めてしまえば、意識しなくても自動的に積み立てられる気楽さがあります。
その上で投資に慣れている方や慣れ始めた方、もっとリターンの期待できる投資に挑戦したい方は、「成長投資枠」を併用するのが良いでしょう。ただ、成長投資枠で投資をする場合、個別株など選ぶ商品によってはリスクも高くなります。つみたて投資のステップアップとして「成長投資枠」に挑戦してみたい方は焦らず、最低でも3ヵ月以上生活ができる預貯金が確保できてからにしましょう。
なおもし併用を考えているのであれば、つみたて投資枠で継続的に投資をしつつ、ボーナスが出たタイミングや資金に余裕がある時にスポット※で成長投資枠を使って買ってみるのもおすすめですよ! 成長投資枠は一括で多額を投資するイメージがあるかもしれませんが、1,000円など少額からはじめてもOKです。また、つみたて投資枠で買っている商品を、価格が下がっているタイミングで成長投資枠で買い足すという使い方もできます。
※自分が好きなタイミングで好きな金額の商品を一括購入すること
迷いがちな成長投資枠の商品選び。初心者はまず「目的決め」と「ファンド検索」から
――成長投資枠は幅広い商品が対象となることから、挑戦したくても商品選びでつまずいてしまう方も多いと思います。そんな方に向け、どのように商品を選んだら良いか教えてください。
初心者の方がご自身で商品選びをする際は、主に下記のような順序で行うと良いのではないでしょうか。
1.目的を決める
まずは、老後に向けてコツコツためたい、配当や分配金を受け取りたいなど、ご自身の投資目的を決めましょう。目的があることで、「多少のリスクがあっても大きなリターンを狙える商品」「配当金が出る商品」などある程度商品選びの軸ができます。
2.金融機関のファンド検索や、人気商品のランキングを活用する
目的をもとに運用方針が決まったら、さらに細かいところまで商品を比較して、商品を絞っていきたいところ。その足掛かりになるのが金融機関のファンド検索や、人気商品のランキングです。
多くの方がチェックする指標は「リターン」です。例えばリターンが10%ほしい方は、10%のリターンがある商品をスクリーニング(絞り込み)機能などで検索します。
さらに検索した商品で下記の項目を確認します。
・運用年数
運用年数から「ファンドがどれくらいの期間運用をしているか」をチェック。運用状況を確認するためには、過去の運用成績が参考になるので、なるべく運用年数が5年以上ある商品を選び、中長期で堅調な成績を出しているファンドを選びましょう。
・純資産総額
純資産総額は簡単にいうとファンドの規模のこと。純資産総額は最低でも50億以上あるのが望ましいところです。純資産総額が少ないと、投資信託が目指す分散投資がしにくく、運用成績に影響が出てくる可能性があります。また、純資産総額があまりにも低いままだと、途中で運用を中止する「繰上償還」が行われてしまう可能性があります。繰上償還が行われた時に含み損を抱えている場合、損失が一気に確定してしまいます。
・費用(申込手数料、信託報酬など)
コストは、運用成績に関わる重要な項目なので、ぜひチェックしたいところです。特に信託報酬は投資信託を保有している間、継続的にかかる手数料ですので特に確認しましょう。
▼投資信託にかかる「費用」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【5分でわかる】手数料はどれくらいかかるの? 投資信託にかかるさまざまな費用を解説!
・年間分配金
ファンドによっては、「分配金」と呼ばれる運用して得た利益を投資家に分配する仕組みを採用していることがあります。そのため、定期的にお小遣いのように分配金を受け取り、キャッシュフローを作りたいなど、分配金が目当ての方は「年間分配金」の項目も見ておきましょう。
――目的を決めて、ファンド検索などで商品を比較する……と。「成長投資枠」の膨大な商品数を目の前にして「どう選べばいいの……」と迷ってしまいそうでしたが、これで何から手をつけたらいいのかわかった気がします!
投資信託や株式などを買ってみると、世界情勢や社会の動きに連動していることがわかり、物の見方が変わってきます。成長投資枠は毎月必ず投資をする必要はありませんし、少額で買うこともできるので、資金の余裕がある時にぜひ、投資の醍醐味を味わってみてください!
またもし、商品選びに迷いそう……という方は、「第四北越銀行の厳選NISAプラン(成長投資型)」のような金融機関がセレクトした商品を参考にしてみるものよいかもしれませんね。もし気になる商品があれば、これまでお話してきたファンド選びの視点を基に自分でも調べてみましょう。