マネーまるわかり

住宅ローン控除、どう適用される? 家を賢く買うために知っておくべきこと

服部椿
イラスト
村林タカノブ
UPDATE
2023/05/31/
一軒家かマンションか迷う夫婦

住宅ローンを利用して住宅を購入するとき、所定の要件を満たすことで受けられる「住宅ローン控除」の内容が2022年に改正されたことをご存じでしょうか。
制度の内容を解説しながら、控除を賢く活用するポイントなどを、住宅購入事情に詳しいファイナンシャル・プランナーの関根克直さんにお話を伺いました。

そもそも住宅ローン控除ってどんな制度?

――住宅ローン控除制度で税金が軽減される仕組みを教えてください。

住宅ローンを利用して住宅の購入や取得、増改築などをする際、所定の要件を満たす場合に、ローンを借りる人の所得税・住民税の一部が控除される制度です。会社員の場合は年末調整で所得税が還付され、所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税が一部軽減される仕組みになっています。
まず現状(2023年4月時点)の内容から見ていきましょう。

●2023年4月時点の控除内容
控除率   :住宅ローンの年末残高(12月31日時点でのローン残高)に対して0.7%
控除期間  :原則13年(中古住宅およびリフォームは10年)
控除の仕組み:所得税と住民税の一部を軽減
※住民税から差し引ける限度額は所得税の課税総所得金額等の5%まで(上限97,500円)

●所定の要件
・住宅の取得等にかかるローンであること
・返済期間10年以上
・ローン借入者自らが居住する住宅(投資用マンション、土地のみの購入は不可)
・住宅の床面積が50㎡以上で、かつ居住用割合が1/2以上(合計所得金額1,000万円以下の場合は40㎡以上)
・新築または取得の日から6か月以内に入居し、住宅ローン控除の適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること
・借入者の合計所得金額(給与所得控除を差し引いた額)が2,000万円以下であること

合計所得金額とは?? 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「源泉徴収票、もらったままにしていませんか? 年収欄だけ見るだけではもったいない!」

制度改正後のポイントは「控除率引き下げ」と「高性能住宅の優遇」

――住宅ローンの控除制度が2022年で改正されたとのこと。どこがどう変わったのでしょうか。

変更点はいくつかありますが、中でもインパクトが大きいのは控除率が引き下げになって減税額が少なくなったことと、環境に配慮した高性能住宅の優遇が始まったことです。

◆改正前と改正後の住宅ローン控除制度(新築、リフォーム物件など買取再販の場合)

改正前と改正後の住宅ローン控除制度(新築、リフォーム物件など買取再販の場合)

※1最大控除額は、控除期間10~13年で受けられる控除の合計金額

◆改正前と改正後の住宅ローン控除制度(中古住宅取得の場合)

改正前と改正後の住宅ローン控除制度(中古住宅取得の場合)

――住宅の種類に関わらず、控除率自体がまず減っているというわけですね。

2022年以前は年末のローン残高の1%、認定住宅に該当しない「その他住宅」の場合でも、最大で400~480万円もの控除を受けることができました。
ところが2022年以降は控除率と借入限度額が縮小され、最大控除額は140〜273万円になっています。つまり改正前と改正後では、減税額が120万円以上少なくなりました。

――ただよく見比べてみると、認定住宅やZEHなどの場合は、従来の一般的な「その他住宅」よりもしっかり控除されていますね。

まさにそのとおりで、政府は「2050年までに二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする」という目標を掲げているので、環境に配慮した高性能住宅は総じて高性能の住宅と認められ、一般の住宅よりも手厚く優遇されるようになりました。
認定住宅は耐震性や気密性が高いうえにリフォームしやすく、長く維持できる住宅。ZEHは二酸化炭素の排出・吸収をプラスマイナスで実質ゼロにすることを目指す住宅で、省エネ適合住宅はZEHほどではないものの高い省エネ性能を備えた住宅です。

優遇される住宅を買えばお得に控除を受けられる……わけではない!?

住宅ローン控除対象の住宅を考える夫婦

――では、改正後は一般の住宅よりも環境に配慮した高性能住宅を建てたほうがお得になるのでしょうか?

そう捉えがちですが、実は誰もがお得になるとは言い切れないんです。
例えば、年収が500万円の世帯(下の表参照)だと、払っている税金は所得税と住民税を合わせて31万円くらい。住宅ローン控除で軽減できるのは、所得税全額と住民税の上限97,500円の合計で約20万円が限度なんです。

■額面年収500万円世帯、借入額2,800万円の場合

額面年収 500万円(総所得金額356万円)
所得控除 基礎控除・配偶者控除を適用
所得税額 100,500円
住民税額 208,500円
合計税額 309,000円
住宅ローン控除で税額から
控除(軽減)できる軽減できる限度額
198,000円

――税金を30万円以上払っていても、20万円程度が控除の限界なんですね。

はい。住宅ローン控除では所得税から引き切れない控除を住民税から差し引けますが、住民税の控除限度額は97,500円までです。ですからこの場合、差し引ける最大控除額は、所得税100,500円+住民税限度額97,500円=198,000円になります。
年間約20万円の控除を受けるために必要な借入金額は約2,800万円。だから高性能な認定住宅を5,000万円の住宅ローンで借りても、一般住宅を2,800万円の住宅ローンで借りても、軽減できる控除額(税金)は変わりません。

2024年以降の入居なら控除額はさらに減額される

専門家に相談する夫婦

――では、年収約500万円で3,000万円程度の新築住宅を購入する場合は、制度改正による影響はそんなになさそうですね。

2023年中に住宅ローンを契約・居住し、控除を受けられる場合は、それほど大きな影響はないでしょう。しかし、2024年以降は新築のその他住宅の借入限度額が2,000万円になり、控除期間は10年に変わります。控除額は最大273万円から最大140万円と一気に少なくなるので、注意が必要です。

――では仮に2023年に住宅購入の契約をして、実際に住み始めるのが2024年になる場合はどうなるのでしょうか。

住宅ローン控除は、家の引き渡しが終わり、実際に住み始めないと適用されません。今から注文住宅の建築を考えている人は2024年の控除適用になり、控除額が少なくなる可能性が高いですね。
最近は資材や職人不足もあって、注文住宅完成までに1年以上かかるケースも少なくありません。建売住宅やマンションであれば内覧から数か月以内に入居することも可能ですが、注文住宅の場合は時間軸が大幅にずれることを念頭に置いて検討すべきでしょう。

――現状の住宅ローン控除は2025年までですが、家を買うなら早めに動いたほうが良さそうですね。

ということになりますね。ただ、先ほどお話したとおり控除額は各世帯の年収によって違います。また、環境に配慮した住宅は高性能である分価格が高いので、簡単に買えるものでもありません。購入の際は、最大控除額を調べ、しっかり検討したうえで借入金額や住宅種別を考えると良いと思います。

住宅ローン控除を賢く活用するには

――住宅の種別より、世帯の年収・課税額にあわせた借入金額が大事ということなんですね。では、夫が年収500万円で、もし妻側に200~300万円程度の年収がある場合は、合算したほうが控除額を増やせますか。

合算すれば控除額を増やすことは可能です。連帯債務を組めるのであれば夫婦で1本の住宅ローンを契約する形になり、夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられるので少しでも控除額を増やす方法としてはありだと思いますよ。ただし、連帯債務がなくペアローンを組んだ場合は契約が2本になり、住宅ローンにかかる諸費用は2倍になるので要注意です。

――現行の控除制度をフル活用するためにローンを長く借りるという考え方もありそうですが。

はい、一理あります。ただし、返済期間が長い分、短く設定したときよりも利息を多く支払うことになります。控除期間の13年ないしは10年経ってから一気に繰り上げ返済するなど、控除を受けられる期間と返済残高、返済総額を見比べると良いでしょう。

【教えてくれた人】関根克直さん
住宅購入サポート、住宅ローン相談、投資用物件の利回り計算などを得意とするファイナンシャルプランナー。チャンネル登録数9万人を超える住宅系YouTuberとしても活動中。

関根克直さん

第四北越銀行の

住宅ローンとは

住宅ローン

詳しくはこちら

第四北越銀行の

住宅ローン

お申し込みはこちら