賃貸マンションに住んでいるのですが、この先のことを考えるとマイホームもいいなと思えてきました。でも、これから住宅ローンを組むのはもう遅い? そもそも住宅ローンって何歳まで組めるの?
【登場人物】
【教えてくれた人】ファイナンシャルプランナー 本間洋一さん
会計事務所、外資系金融機関などを経て、2004年に独立系ファイナンシャルプランナーとしてFPオフィス「ファイナンシャルクリニックサービス」設立。アドバイス方針の一つは、「お客様の不安、疑問、お考えをとにかく聴く」こと。
【話を聞く人】山口さん
新潟市内在住の40歳。妻と二人暮らし。趣味は体を鍛えること。賃貸マンションに住み続けようと思っていたが、マイホームが気になり始めた。
40代は無理なく住宅ローンを組めるラストチャンス
賃貸マンションでずっと暮らそうと思っていたのですが、最近になってマイホームもいいかなと迷っています。そもそも住宅ローンって、何歳まで申し込めるんですか?
金融機関によって異なりますが、だいたい「70歳まで」としているところが多いですね。ただし、現実的には50歳を超えるとローンを組みにくくなると思ってください。
えっ!?どうしてですか?
団信(団体信用生命保険)に加入できない恐れが高まるからですね。
ダンシン……って何でしたっけ?
団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローンの契約者が、病気や不慮の事故で亡くなってしまった、病気になって寝たきりになってしまった……など、万が一の事態に陥ってしまったときに、住宅ローンの返済が免除されるという保険です。住宅ローンを組む際には、原則として「団信」への加入が必須です。
なるほど、それはありがたいですね。
しかし一般的な生命保険と同じで、健康状態が悪かったり、過去に大きな病気をしていたりすると、加入が認められないことがあります。50歳を過ぎた頃から、あちこち悪いところが出てくるものです。
私は大丈夫です。週1回はジムに通って健康に気をつかっていますから!私の腹筋見てみます?
い、いえ。結構です……。 腹筋と健康は、あまり関係ないと思いますが……。
そうか、残念だなぁ~。意外といい体してるんですよ。 ちなみに、団信未加入でも組める住宅ローンはないんですか?
フラット35は団信に加入していなくても利用できます。ただし、団信に加入していないと、返済中に万が一亡くなってしまった場合、住宅ローンという大きな債務をそのままご家族に残すということになります。ですから、団信なしで住宅ローンを組むことは、私はあまりおすすめしていません。
たしかに、家族のことを考えると……。でも私は鍛えてますから!
「万が一のときには、加入済みの生命保険でカバーできる」という方であれば、団信なしの住宅ローンを検討してもいいと思います。また、資産状況や生命保険の加入状況によっては、原則、団信の加入を条件としている金融機関でも、個別相談で住宅ローンを組める場合もあります。
特例もあるわけですね。
はい。あと、40歳を過ぎたら「完済時年齢」にも注意が必要になります。
それはなんですか?
住宅ローンを払い終える年齢制限のことです。これも金融機関によってまちまちですが、75歳から80歳に設定しているところが多いですね。この「完済時年齢」を超えて返済期間を設定することはできません。つまり、「完済時年齢75歳」の住宅ローンを50歳で借りるとしたら、返済期間は25年が最長です。
そっか、高齢になれば返済期間が短くなることもあるんですね。
団信の加入や完済時年齢のことを考えると、40代がまとまった自己資金無しに無理なく住宅ローンを組めるラストチャンスと言ってもいいと思います。
手元にある程度の現金を残した返済計画を
40歳で35年ローンを組んで、ふつうに返済していくと完済は75歳。定年後10年以上もローンを返済し続けることになるので、さすがに不安があります……。どのような返済計画を立てればいいですか?
理想は「定年までに完済」です。そのためにも、繰り上げ返済を前向きに検討してください。
繰り上げ返済! そんな余裕あるかな……。
ただし無理は禁物です。もちろん繰り上げ返済のタイミングは、早ければ早いほど利息軽減効果が高まります。なかには「少しでも余剰資金ができたら、すべて繰り上げ返済にあてる」という方もいますが、私は不測の事態に備えて、ある程度の現金を手元に残す方が良いと考えています。
また、今は住宅ローンの残債額に応じて所得税が控除される「住宅ローン控除」が特例で13年に延長されています。それをフル活用して、13年後から繰り上げ返済を加速させるというのも効果的な返済方法です。(税制改正の可能性もあるため確認が必要です)
そのほか、「退職金で一括返済」という方もいますが、退職金以外にも自身で定年後に備えて準備をしていたり、定年後のキャッシュフローがよほど安定している方でない限り、退職金を全額返済にあてるのは無理があります。住宅ローンの返済が無くなったとしても、生活はしていかないといけません。退職金の半分程度は現金として残すように計画するのが良いと思います。
団信の特約選びは保険を見直すいい機会
返済計画についてもよく考えてみようと思います。ちなみに、「住宅ローンでがん保険に加入できる」と聞いたことがあるんですが。腹筋を鍛えてもがんになるかもしれませんからね!
それは先ほどお話した団信(団体信用生命保険)の特約のことですね。死亡・高度機能障害時に保障される基本の団信料は、もともとの金利に含まれていますが、一般的な生命保険と同じように、団体信用生命保険も金利を上乗せすることで保障内容を手厚くできます。代表的なのが「がん保障」。がんと診断されると、保険金がおりて住宅ローンが完済されます。
特約をつけると、どのくらい金利が上乗せされるんですか?
特約ごとに異なりますが、だいたい0.1~0.3%程度上乗せになります。「がん保障」でいえば、金利の上乗せ幅をおさえる代わりに住宅ローン残高の50%だけ返済されるというものもあります。また、最近は「がん保障」を無料で利用できる団信も出始めています。
そのほかどんな特約があるんですか?
メジャーなのは、「がん保障」をさらに手厚くした「3大疾病保障」。がんの診断がおりたときだけでなく、脳卒中と急性心筋梗塞になった場合にも、住宅ローンの残高が完済されます。また、一定期間は月額のローン返済分が保障され、それを過ぎても症状が回復しない場合に完済されるタイプもあります。
がん以外にも適用されるのですね。
3大疾病に、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎の5疾患を保障対象に加えた「8大疾病就業不能保障」もありますよ。
また、就業不能に備えた「全疾病就業不能保障」を選べる団信もありますね。精神障害等、所定の免責事由に該当する場合を除き、病気やケガで働くことができない状態になると、最長1年間住宅ローンを弁済してもらえます。その後も就業不能状態が続くと、保険金がおりて住宅ローンの残高が完済されます。
その他に、病気やケガなどで一定の要介護認定となった場合等に保険がおりる「介護保障」などもあります。
いろいろあるんですね。返済期間中に特約をつけたり、外したりはできるんですか?
それはできません。ですから、十分に検討してから契約してください。
うーん、団信の特約と一般的な保険の違いがいまいちわからなくて…。両方に入るメリットはあるのでしょうか。
例えばがんと診断確定されたとき、民間の保険ではがん治療に充てられる給付金がもらえますが、団信の特約では住宅ローン残高が0円(もしくは50%)になります。
でも、団信の特約のみでは住宅ローン残高が0円(もしくは50%)になるものの、がんの治療費は自己負担。がん保険にも加入することで高額となるがん治療費の給付金ももらえます。
なるほど、そういった違いがあるのですね!
住宅購入は、ライフプラン上、大きなイベントですので、加入している生命保険の内容等を見直すきっかけにして頂くとよいと思います。
なるほど、保険も見直してみようかな…。
本日は勉強になりました! 住宅ローンを組むときの参考にします。
住宅ローンの返済は返済期間も長く、生活に与える影響も大きいことからより綿密な資金計画が必要になります。専門家に相談するなどしながら、定年後もゆとりある生活が送れるプランを考えてください。