新築住宅を建てたり買ったりするとき、一定の条件を満たせば税金の軽減措置や補助金を受けられることをご存じでしょうか。家は一生に一度の大きな買い物。お得な制度や補助金があるのなら上手に活用したいところです。
そこで、新築住宅の建築・購入時に使えるお得な制度や補助金をご紹介! 新潟県の住宅事情に詳しいファイナンシャル・プランナー、昆 知宏さんに賢い活用方法をうかがいました。
まずは新築住宅向けの減税制度と補助金をチェック
――新築購入時に適用される減税措置や補助金にはどのようなものがあるのでしょうか。
いくつかあるのでぜひ知っていただきたいです。まずは、現状(2023年8月時点)で使える制度と補助金の内容を見ていきましょう。
注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入で使える主な減税制度と補助金(下表)をご覧ください。
名称 | 利用期限・申請方法 | 概要 |
---|---|---|
1.【補助金】 こどもエコすまい支援事業 |
・2023年12月31日まで ※令和5年度の交付申請期限 ※予算上限に達すると受付終了 ・建築事業者経由で交付申請を行う |
「18歳未満の子を育てる子育て世帯」または「夫婦いずれかが39歳以下の若者夫婦世帯」が高い省エネ性能の住宅を新築・購入すると100万円の補助金 |
2.【補助金】 ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)補助事業 |
<ZEH支援事業>の場合 (一次公募) 2023年4月28日~2023年11月10日 (二次公募) 2023年11月20日~2024年1月9日 ※予算上限に達すると受付終了 ・施工会社経由で交付申請を行う |
<ZEH支援事業>の場合 所定の施工会社が所定のZEH住宅等を新築すると、55万円~100万円の補助金 |
3.【事業者向け補助金】 LCCM住宅整備推進事業 |
(第一回) 2023年4月17日~2023年9月29日 (第二回) 2023年10月中旬~2024年1月中旬 ・施工会社が交付申請を行う |
所定のLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅を新築した事業者に対し、最大140万円の補助金。消費者に対しては補助金相当額の還元が基本とされている |
4.【減税】 住宅ローン控除 |
・2025年12月31日まで ・ローン利用者が確定申告を行う(会社員は2年目から年末調整) |
毎年末時点のローン残高×0.7%の所得税を控除できる※控除しきれない場合は翌年の住民税の一部を減額 |
5.【減税】 住宅取得資金贈与の非課税特例 |
・2023年12月31日まで ・利用者が特例適用を受けるために贈与税申告が必要 |
父母や祖父母から住宅の新築・取得のための資金を贈与されると、一定の金額まで贈与税が非課税 ・一定の省エネ基準を満たす住宅:1,000万円 ・それ以外の住宅:500万円 |
――結構ありますね。利用時に注意する点はありますか?
制度ごとに対象になる住宅の基準や期限が定められているのでご注意ください。また、利用時はそれぞれ申請が必要となります。
たとえば、1~3の事業は、申請なども含めほとんどの役割を住宅事業者が担うため、この補助金を活用したい方は、それぞれの支援事業に登録している事業者(リフォーム店、工務店など)を選ぶ必要があります。
――申請をしなくても自動的に適用されるような減税制度はないのでしょうか。
あります。下記の表は、注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入の際に手続き不要で適用される減税制度で、ほとんどの住宅が対象になる減税制度です。
名称 | 利用期限・申請方法 | 概要 |
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6.【減税】 登録免許税の税率軽減 <申請不要> |
・2024年3月31日まで | 不動産の登記手続き時の税率が軽減される |
7.【減税】 不動産取得税の軽減 <申請不要> |
・2024年3月31日まで | 軽減税率の適用に加えて、課税標準額が減額される |
8.【減税】 固定資産税の軽減 <申請不要> |
・2024年3月31日まで | 新築住宅にかかる固定資産税が3年か5年間、認定長期優良住宅については5年か7年間、2分の1に減額される |
このほかに新潟県や新潟市が独自で実施している補助金もありますが、法人向けやリフォーム向けになっています。
「補助金ありき」で家を買うのはおすすめしない理由
――制度や補助金の対象になっている「ZEH住宅」とか「LCCM住宅」とは、どういう家ですか。
「ZEH」は「Net Zero Energy House」の略語で、「断熱性能を上げることで住宅内の室温を快適に維持できるようにした住宅」のことですね。
省エネ性能の細かい基準は制度や補助金によって違いますが、現在新潟県内で建てられている住宅のほとんどは一定の省エネ性能を満たしている「ZEH水準省エネ住宅」か「省エネ基準適合住宅」と呼ばれるもの。すなわち冷暖房効率が向上するため、温めたり冷やしたりするエネルギー負荷が下がり、光熱費を節約できるのが大きなメリットです。
また、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅は、「建築から解体・再利用までのライフサイクル全体を通じたCO2の排出量をマイナスにする」住宅です。
▼「ZEH住宅」についてくわしくはこちらの記事をご覧ください
【注文住宅】建てるならどんな家にしたい?人気の住宅設備とオプションを専門家に聞いてみた
――せっかくなら、いくつかの補助金制度を使いたいところですが……。
国の補助金は原則併用できないため、補助金を利用するならいずれか1つとなります。また補助金は申請期間がだいたい1年あまりと短く、それに予算上限に達した時点で終了です。追加予算がついて延長されることもありますが、現時点ではどうなるかわかりません。
言ってみれば「早い者勝ち」なので、間に合わないリスクがあることも知っておくべきでしょう。
――補助金制度を利用する前提で家を買っても、実際には施工のスケジュールが間に合わず制度を利用できない、補助金をもらえないケースもあるということでしょうか。
そうですね。通常、家を建てるときは土地探しに半年程度、家が建つまでさらに10か月程度かかります。実際に家に住めるようになるまで1年以上かかる場合も多いので、そもそも補助金の申請期間と家づくりのタイミングを合わせることは難しいんです。
したがって、大前提として補助金ありきの建築や購入はおすすめしません。納得がいく土地や住宅を見つけてから、「条件が合いそうな補助金があればラッキー」くらいに思っておくほうがいいでしょう。目先の数十万円~百万円を気にして焦るよりも、各家庭で後悔のない家作りや家選びをするほうが重要です。
――今年度の補助金は諦めて、来年の補助金活用を目指すという手もありそうですが。
すでに土地が決まっている段階なら、来年度の補助金スケジュールにあわせて家作りを計画する方法もあります。国の補助金制度は、毎年11月頃に補助金の骨格が報道され始め、年末に正式発表、翌年の3月から制度が施行され、秋頃に予算を消化する流れが一般的です。それなので来年の3月頃に着工できるよう、準備するのも1つの方法です。
住宅ローン控除や住宅資金贈与も視野に入れよう
――補助金が使えないとしたら、住宅ローン控除優先で考えればいいでしょうか?
補助金は先着順など不確定要素が多いですが、住宅ローン控除や住宅資金贈与の非課税制度は条件さえ満たせば必ず使えます。控除される金額も大きく、使いやすい制度なので、この2つをメインに考えたほうがいいでしょう。
――これから住宅ローン控除を利用する際の注意点を教えてください。
2024年以降に入居する場合、住宅ローン控除の最大控除額が下がります。下の表にあるとおり、新潟県で多く建てられている「ZEH水準省エネ住宅」や「省エネ基準適合住宅」だと、今年入居する場合と比べて借入限度額が1,000万円も下がります。
より省エネ性能の高い「長期優良住宅」にすれば、「ZEH水準省エネ住宅」や「省エネ基準適合住宅」と比べると最大控除額が約90万円変わってくるので、控除をフル活用できるはずです。
新築住宅の住宅ローン控除変更点
住宅の区分 | 2023年までに入居 年末残高限度額 カッコ内は最大控除額 |
2024年-2025年入居 年末残高限度額 カッコ内は最大控除額 |
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長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 5,000万円 (455万円) |
4,500万円 (409.5万円) |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 (409.5万円) |
3,500万円 (318.5万円) |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 (364万円) |
3,000万円 (273万円) |
その他の住宅 | 3,000万円 (273万円) |
2,000万円 (140万円) ただし、2023年12月31日までに建築確認を受けている、または2024年6月30日までに建築された住宅。上記に当てはまらない住宅は対象外 |
・控除期間:13年。「その他の住宅」のみ2024年以降は控除期間10年
・控除率:全期間一律0.7%
▼くわしくはこちらの記事をご覧ください
住宅ローン控除、どう適用される? 家を賢く買うために知っておくべきこと
――ただ、建てる家をZEH水準省エネ住宅から長期優良住宅にすると建築費も上がりますよね。フル活用するための見極めポイントはありますか?
3,500万円以上借りる方は、控除額が多い長期優良住宅を検討したほうが減税の恩恵をフルで受けられます。おそらく、2024年以降に入居になる方へはハウスメーカーや工務店から、長期優良住宅を提案される機会が増えるのではないでしょうか。
一方、借入額が3,500万円以下の方は、必ずしも長期優良住宅にこだわる必要はないかもしれません。
――親や祖父母からの資金援助を受ける人もいますよね。最初の表の5にも記されている「住宅資金贈与」についても教えてください。
住宅資金贈与とは、住宅を新築するための資金を自分の親や祖父母から贈与してもらうことで、一定額まで贈与税がかからないという特例制度です。適用を受けるには、2023年12月31日までに贈与をしてもらい、翌年の3月15日までに家の引き渡しを受けている必要があります。
ただ、新築住宅には例外規定があって、来年の3月15日までに屋根が立っている「上棟」の状態になっていれば問題ありません。この住宅資金贈与は来年以降どうなるかわからないので、親から資金援助の予定がある場合、非課税制度はぜひ活用してください。
補助金も減税制度も期限が決まっているので、焦りたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、急いで決めた結果、後悔している方もたくさんいらっしゃいます。「別の土地にすればよかった」とか、「住んでみたら暮らしにくい間取りだった」などが多い理由です。
だからこそ、土地や物件探しから資金計画まで、家づくりは焦らずにしっかり納得した上で、取り組まれることをお勧めします。