大学や専門学校が高校生向けに開催するオープンキャンパス。「どういうものか実はあまり知らない」「行くべきか迷っている」という保護者や高校生のために、メリットやチェックポイントをご紹介! 日本全国約800大学すべてを訪問し尽くし、オープンキャンパスや受験事情にも詳しいジャーナリストの山内太地さんにお話を伺いました。
オープンキャンパスとは?
――オープンキャンパスは主にどのようなプログラムが行われているのでしょうか?
基本的には、以下の3つのプログラムです。
- 大学側による説明会
- 個別の相談会
- キャンパス見学ツアー(教室や研究室、学食、図書館などの施設めぐりが主)
ただコロナ禍で、これら3つ全部がオンラインでも可能になりました。オンラインには主に、リアルタイムで参加する方式と、期間内ならいつでも何度でも閲覧できるオンデマンド方式の2種類があります。
――オンラインが普及することで遠方の人も参加しやすくなったのは大きいですね。
確かにそうしたメリットはありますね。ただ実際に行かないとわからない部分もありますし、実際に行くことで、何よりお子さん本人のモチベーションが上がります。ですので、オンライン参加とリアルな参加の併用をおすすめします。
ピークは夏場、秋以降も見学可能
――オープンキャンパスの開催時期はいつ頃なのでしょうか?
オープンキャンパスは5月のゴールデンウイーク明け頃から始まって、6~7月の土日はどこかしらで必ず開催されています。一番のピークは夏休み中の7月後半で、8月の前半頃にいったん落ち着きます。
――それ以外の時期ですと、参加は難しいですか?
そんなことはありません。学校にもよりますが、秋になると文化祭で専用のブースを出していたりしますし、最近は小規模な土日説明会を毎週開催しているケースもあります。また、大学のアドミッションセンターや入試課に予約を入れれば学内を見学できることも多く、普段の大学の姿がわかるのでおすすめです。
ぜひ複数校に足を運ぶべし
――オープンキャンパスに参加するにあたり、何か準備しておくべきことはありますか?
質問の準備ですね。個別相談会などは大変混雑するため、質問できるのは1人10~15分くらいと限られています。保護者と受験生本人それぞれが、パンフレットやホームページで予習をして、それでもわからない点やもっと詳しく知りたい情報を聞きに行くようにしましょう。学部の内容や、自分が興味のある分野について勉強できるのか、就職のサポートなどは聞いておくべきでしょう。親御さんなら当然、学費面が気になるでしょうから質問できる機会があれば聞いておきたいところです。また帰る途中には、復習も欠かさないでください。実際にどう感じたか、イメージと違った点などを親子でよく話し合ってみましょう。
――確かに、パンフレットやホームページではすごく立派に写っているけれど、実際行ってみたらそうでもなかった……とかありそうですよね。
大学ごとの違いや特徴をよく把握するためにも、オープンキャンパスはぜひ複数校に足を運んで見比べることをおすすめします。最近は大学側も遠方からの参加者を意識して日程を合わせて開催してくれるケースが多いんです。たとえばキャンパス同士が近かったり、校風が似ていて受験生が重複しそうな学校は同じ日にオープンキャンパスを開催することも増えていて、午前と午後で2、3校訪問できることも珍しくなくなりました。
――オープンキャンパスで「これは絶対参加しておいた方が良い」というプログラムはありますか?
一般入試・AO入試を受ける場合は受験対策講座、総合型選抜や学校推薦を受けるなら模擬面接でしょうか。特に模擬面接は「やってみたらうまくしゃべれなかった」という事態を招きがちなので、プログラムに入っていたら必ず受けておきましょう。
もし理工系の学部を志望されていて、研究室見学ツアーがある場合は参加必須です。実験の様子や設備をチェックできますし、研究の擬似体験ができるコンテンツを用意している学校もあります。
また、大学によっては研究室を全部開放して見学させてくれるところもあり、個別の研究についてじっくり質問ができます。入学後の具体的なイメージをつかむことができ、モチベーションアップにもつながる魅力がありますね。
<オープンキャンパス参加のポイント>
- 実際の空気感をつかむためにも、実際に訪問すべき(オンラインとの併用は◎)
- 事前にHPやパンフレットで予習をして質問を準備して挑むべし(復習も大事)
- 大学ごとの違いや特徴を知るためにも、複数のオープンキャンパスに参加を
- 一般選抜の場合は受験対策講座、総合型選抜や学校推薦だったら模擬面接は参加必須
- 理工系なら、研究室見学ツアーなどで実験や研究の設備を実際に見ておくと◎
「自分の頃はこうだった」は忘れよう
――親世代はオープンキャンパスを経験していないことも多いですよね。「参加しないよりはした方がマシ」「高校2年生とか高校3年生になったときに行けそうだったら行けばいい」くらいに考えていそうで。
おっしゃるとおり。ただ、現在の大学受験は推薦で決まる割合が以前よりも増えています。試験方法もセンター試験の5教科7科目時代と違って、私立と同じように3科目だけで受験できる国公立大学が増えました。また、筆記試験なしで面接と書類選考、小論文で受験できる総合型選抜もあって、早めに志望校を定め、その対策に取り組んでおくことで、希望の大学や人気の大学へ合格する可能性が前よりもずっと高くなっているんです。そういう意味でオープンキャンパスは高校1年生から参加していたほうがいいことを親側も認識するべきでしょう。
――となるとオープンキャンパスは親もやはり一緒に行くべきでしょうか? 「友人同士でワイワイしながら参加したい」というお子さんも多そうですが……。
親は絶対に同行すべきです! というのも、親世代が受験生だった頃とは状況がまったく変わっているので、今の受験事情や対策を親も一緒に学ばなくてはいけません。「自分の頃はこうだった」は完全に忘れてください。
最近の入試の傾向も要チェック
- 受験は推薦で決まる割合が増加中
- 国公立大学の試験方法が変化している
-3科目だけで受験できるところが増加
-書類選考・面接・小論文などで受験できる総合型選抜が増加 - 推薦や総合型選抜では、高校一年生からの学業・課外活動の積み重ねが大事
- テストの点数や高校の偏差値に関わらず、“希望する大学”への道はあるので、早くから実情を掴んで親子で対策を立てるべき
オープンキャンパスで学費の相談もできる!
――進学先での勉強内容や学生生活もさることながら、親としては学費面も気になります。
ほとんどのご家庭が気になるトピックだと思います。残念なお話ですが、せっかく志望校に合格したのに資金がなくて進学を断念するケースもあるんです。家計が厳しいからと諦めずに早めに奨学金も含めて、いろんな可能性を探ってほしいですね。学費の相談ができるオープンキャンパスもたくさんあります。
――早めに志望校を設定することで、親の方もどれくらいお金がかかるのかがわかって学費面での対策を立てやすくなりますよね。
そういう意味でも、高校1年生の段階でオープンキャンパスに参加するのは親にとっても有意義なんです。ただし、国公立大学を前提とした学費を想定していると、想定通りにならない場合に学費が足りない!といったことがあるので、余裕をもって対策してくださいね。
親が確認しておきたいチェックポイント一覧
最後に、オープンキャンパスのプログラム以外でチェックすべきポイントを山内さんに教えてもらいました。ぜひ参考にしてみてください。
アクセス
大学までのアクセスや通学時間をチェックしましょう。遠方の場合、朝一の授業が何時スタートで自宅を何時に出れば間に合うのかなども必ず確認を。
授業以外で過ごせるスペース
教室以外に、空き時間をどこで過ごせるかをイメージしながらキャンパスを見学しましょう。図書館や学習スペースはむろん、学食やカフェなどがあればぜひ見ておきたいところです。
学生寮やアパートなどの不動産
最近、首都圏では家賃やセキュリティ面でメリットが大きいことから学生寮が見直されており、昔のような大部屋ではなく個室タイプが標準になりつつあります。
また、オープンキャンパスの会場に不動産業者がブースを出しているケースも珍しくありません。物件の相場はもちろん、スーパーマーケットや定食屋など周辺の生活環境もチェックしておくと生活費の計算がしやすくなります。
学費
大学には、成績優秀な学生や、経済的に困窮している学生を支援する目的で奨学金制度が用意されています。返済不要の奨学金も多いので、学費面が気になる場合はオープンキャンパスで担当者に相談してみましょう。
就職ブース
最近では、就職ブースを設ける大学も増えています。就職担当官やキャリアセンターのスタッフが卒業後の就職について相談を受けてくれるので、気になる点は聞いておきましょう。
関東のある大学では新潟の大学と就職支援で協定を結び、情報交換を行いながら学生の就職を支援しています。もちろんどこで就職するかは本人の意志ですが、大学から離れた地元での就職情報も得られることは将来の選択肢の幅に大いに貢献するでしょう。