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知っているようで知らない「終身保険」、しくみがわかれば 「不要論」の真偽がわかる?

鈴木絢子
イラスト
鈴木衣津子
UPDATE
2023/12/14/
終身保険について悩む男女

「終身保険」という名前は、生命保険加入を検討する人なら一度は聞いたことがあるはず。ただ、その内容を詳しく説明できる人は少ないのではないでしょうか。ネットで検索してみると「高い」とか「いらない」とか、ちょっとマイナスなキーワードもあって、本当のところはどうなの……? そんな疑問に答えるべくファイナンシャルプランナーの加藤梨里さんに教えてもらいました。
※本稿は死亡保険についての解説になります。表中、本文中の「終身保険」は終身死亡保険、「定期保険」は定期死亡保険を指します

そもそも「終身保険」ってどんな保険?

――いろんな生命保険がありますが、終身保険の特徴を教えてください。

終身保険を含めた様々な生命保険の解説はこちらの記事を確認してもらうとわかりますが、ひとことで言えば、その名のとおり「終身にわたる保障」があることが最大の特徴です。

掛け捨て型の生命保険に比べると保険料はやや割高ですが、途中で解約しても払い込んだ保険料が戻ってくる「解約返戻金」があります。戻ってくる額は契約の内容や保険金額、契約日から解約日までの期間などによって異なりますが、資産を増やす目的で終身保険に加入するケースもあります。

――どんな人におすすめですか?

終身保険は、色々な使い方ができる商品ですが、例えば加入した1年後でも30年後でも、亡くなった時には保険金が支払われます。葬儀費用などの一定の金額を、亡くなる時期に関わらず家族に遺したい人が主に検討したい保険です。

そのため、一定期間だけ死亡保障を備えておけばいい場合は終身保険ではなく、保険料も抑えられる「定期保険」が効率的でしょう。また、保険期間の経過に伴い保険金総額が減少するため、保険料負担を軽くしやすい「収入保障保険」や、保険期間中に万が一亡くなってしまった場合でも、満期を迎えた場合でも同額の保険金が受け取れる「養老保険」などの選択肢もあります。
ライフプランや現在のライフステージに応じて、最適な商品はそれぞれ異なります。

■生命保険の比較

生命保険の比較表

(※1)一定額を一定期間、継続的に払い込む、分割払いのこと
(※2)解約時期によっては解約返戻金がないか、少額の場合があります
(※3)保険期間中のみ解約返戻金が付く商品もあります

最近は「定期保険は満了を迎えてしまったけれど、葬儀費用の足しにしたいから終身保険に入りたい」という高齢の方もいますし、解約返戻金を受け取って生きている間の老後資金や介護費用に充てるという例もあります。

また、スムーズな遺産分割や亡くなった後の整理費用などに活用する方もいらっしゃいます。銀行預金は口座の契約者が亡くなると一度凍結されてしまい、遺産分割協議が完了するまで家族が引き出すことができません。そのため、一般的には亡くなった直後に執り行う葬儀費用に預金を充てるのは難しいです。しかし、終身保険なら契約時に定めた受取人に保険金が支払われるので、請求手続きをすれば比較的早く家族などの受取人にお金を渡すことができるのです。

生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という相続税の非課税枠もあるので、相続税対策として終身保険を活用する方もいますよ。

子育て世代の終身保険との付き合い方

解約返戻金の使い方のイメージ

――終身保険にはいろんな使い方があるんですね! でも何だか、高齢の方の活用法が多いですね。

子育て世代の活用方法もありますよ。例えば学資保険の代わりに使うケースです。終身保険は契約期間の途中で解約した時に解約返戻金を受け取れることがあるため、学資保険のように子どもの教育資金を貯蓄するために活用することができます。

学資保険は被保険者を子どもとして契約するのですが、加入できるのは一般的に子どもが幼少のうちに限られます。これに対して終身保険は保護者を被保険者として契約できるので、子どもが学資保険に加入できない年齢に成長していても加入できる可能性があります(※)。こういった面から、受け取り額や保障内容などを学資保険と比較したうえで、終身保険を選択される方もいます。
※被保険者の年齢や健康状態によっては加入できないことがあります

――では若い人にとっても、終身保険は選択肢の1つだと考えていいでしょうか? 例えば30代前半のご夫婦で、1~2歳の赤ちゃんがいるようなご家庭などはどうでしょう。

もし、ほかの生命保険に加入しておらず初めての生命保険を検討しているのであれば、まずは万が一の死亡に備えてご家族にお金を遺すことを優先的に考えるのが一般的です。お子さんが幼いケースでは親が死亡してから成長するまでの期間が長い分、生活費や教育費を踏まえて必要な保障額が高額になる傾向があるため、終身保険よりも先に定期保険や収入保障保険を検討するご家庭が多いです。

――それはどうしてでしょうか?

定期保険や収入保障保険は掛け捨てのため、保険料が比較的お手ごろです。保険金額が同額の場合、終身保険はこれらに比べると保険料が割高になります。
また定期保険や収入保障保険は保険期間が一定なので、保障が必要な時期だけ契約したいという場合に向いています。お子さんが成長するまでの期間や、現役で働いて収入がある期間などに絞って設定することができます。
そのうえで、終身の保障も必要と考えていたり、家計で無理なく保険料を払い込んでいけるような場合に、終身保険を検討するといいと思います。
定期保険・収入保障保険と終身保険を組み合わせて契約することもできますよ。

「終身保険不要論」は正しいの?

終身保険が不要と言われている理由のイメージ

――最近は「終身(生命)保険は損をするから、選ばないほうがいい」という声を聞くこともあるのですが……。

いわゆる「終身(生命)保険不要論」ですね。これは保険を資産運用の手段としてとらえると損なのではないかという議論かと思います。確かに、効率的にお金を増やす目的だけでみれば、次のような面で終身保険は必ずしも有利とはいえません。

・積立利率が低い
以前は円建ての終身保険にも利率が高く、解約返戻金による高い運用効果を期待できるものがありました。しかし、低金利下では円建て終身保険の積立利率も低水準で推移しているので、払い込んだお金を大きく増やすことは現在はそれほど期待できません(※)。
※今後の金利動向次第で状況が変化する可能性があります

・税制優遇措置の充実度
積立型の保険や預金などの利率が低いことに加えて、昨今ではNISAなど、株式や投資信託の非課税制度が充実してきているという点でも、資産運用への注目が高まっています。終身保険を含め生命保険にも税の措置はあるのですが、投資額や運用実績しだいではNISAなどでの非課税効果の方が高くなる場合があります。

「損」をしないための保険選びとは

――実際に終身保険で「損」をすることはあるのですか?

商品や金利の状況などによっても異なりますが、短期間で解約してしまうと、支払った保険料総額に対して解約返戻金の金額が下回ることがあります。また、返戻率(払い込んだ保険料総額に対する解約返戻金の割合)が100%を超えたとしても、インフレによって貨幣価値が下がっていれば、受け取ったお金の実質的な価値はマイナスになる恐れがあります。そういう意味では「損」をする可能性はあります。

ただ、そもそも終身保険は本来、お金を増やすためというよりは万が一の死亡の際に遺された家族の生活を守るための商品です。資産運用の手段としては万能ではないかもしれませんが、「もしものときのお守り」という終身保険の本来の意味で考えることが大事だと思います。いつ亡くなっても保険金が受け取れる、このシンプルな生活保障が終身保険のメリットなのです。

お金を増やすことだけが目的なら、リスクも十分に理解したうえで投資信託や債券、株式などの資産運用方法を選ぶのが向いているのではないでしょうか。

――お話を通して、終身保険の考え方や立ち位置がよく見えてきました。

保険だけでなく、金融商品のしくみをしっかり理解して、ご自身やご家族のニーズやライフプランに合ったものを適切に選ぶことが、損をしないためにも重要です。
保険選びで迷われた際は銀行などの金融機関や専門家に相談していただけたらと思います。

【教えてくれた人】加藤梨里さん
ファイナンシャルプランナー(CFP®) マネーステップオフィス株式会社代表
保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て2014年に独立。専門は保険、ライフプラン、健康経営など。大学院で健康増進について研究活動を行い、健康マネジメント学修士号を取得。著書に『世帯年収1000万円』(新潮社)、『ガッツリ貯まる貯金レシピ』(主婦と生活社)など。

加藤梨里さん

第四北越銀行では、新潟コンサルティングプラザ内に資産運用専門担当者を配置し、資産運用相談ブース「マネープランラボ」を設置いたしました。
さまざまなリスクに備えるための保険や、将来の資産形成に向けた積立運用など、各種資産運用に関するご相談を土日も承ります。
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