アウトドアブームの中、世代を問わず人気を誇るSUV(Sport Utility Vehicle)。
積雪のある地域では、普段の移動手段としてもSUV車が選択肢に挙がることも多いのではないでしょうか? そこで、「軽SUVかコンパクトSUVか」をさまざまな観点から比較しつつ、初めてSUVを選ぶならどんなポイントを押さえるべきかを、カーライフジャーナリストのまるも亜希子さんに解説していただきます。
SUVってどういう車?【基礎知識編】
――そもそもSUVとはどういう車なのでしょうか?
SUVは、元々は本格的に荒れた道を走る車のことを指していましたが、最近はSUVテイストのデザインを取り入れたもの、乗用車と四駆(クロスカントリーSUV)をミックスしたようなものが日本で主流になっています。
見た目の特徴としては、大きく2つあります。
1 最低地上高(車高)が高い
SUV以外の車の車高(車両の最も低い個所と地面との距離)は140mmほどですが、SUVの場合は170~210mmと高く確保してあります。これによりドライバーの視点が高くなり、遠くまでよく見通せるので、渋滞時にどこで詰まっているかわかったり障害物を見つけやすかったりします。
2 アンダーガード付き
アンダーガードが付いているのも特徴です。車の下回りをガードする鉄板のようなもので、オフロードを走る際に小石などの障害物から、車両の下部をガードしてくれます。
――軽SUVとコンパクトSUVはどう違いますか?
比較してみました。
軽SUV | コンパクトSUV | |
---|---|---|
排気量 | 660㏄以下 | 1,000~1,500cc前後 |
サイズ | 全長3.4m以下、全幅1.48m以下 | 全長4.5m以下、全幅1.8m以下 |
このような従来の規格以外で言えば、次の2点が大きく違うところですね。
1 重心
コンパクトSUVに比べて軽SUVの方が重心が高いため、高速道路でスピードがある状態でカーブを曲がると少しぐらっとなったり、強い風が吹くとハンドルが取られやすくなります。
2 馬力(エンジンのパワー/最高出力)
コンパクトSUVの馬力が約130〜150馬力なのに対して、軽SUVは大体64馬力ぐらいです。これはメーカー各社の自主規制によるものです。軽SUVの場合、高速道路ではそのパワーをめいっぱい使って走ることになるので、エンジンの回転数が高くなり、音や振動が大きくなるので「うるさい」と思う方もいるかもしれません。
――そうなると、軽SUVは市街地メインで使う人向きですかね。
そうですね。ボディーサイズが小さいので小回りがきき、狭い道でもスイスイ走りやすいのが軽SUVの魅力です。街中で乗ることが多く、高速道路を運転する機会が少ない方におすすめです。
一方で、コンパクトSUVの場合は高速道路、長距離を安定して走ることを考えて作られているので、高速道路を頻繁に走る方におすすめです。
重量の「軽さ」が雪道を制する【雪道走行編】
――新潟と言えば、雪道ですが。雪道を走る上ではどうでしょう?
実は雪道を走る上で大切な要素は「軽さ」なんです。坂の上に自宅がある場合など、重量がある普通車だと結構大変かなと思います。
――パワーが重要なのかと思っていました!
アップダウンの多い雪道をよく走るなら、重量が軽い車を選ぶのが賢明です。軽SUVでもコンパクトSUVでも、軽くてしっかりした四駆性能を持ち、最低地上高もしっかりとってある車が理想ですね。
――ほかに雪道を走る上で、あるとよい機能などあれば教えてください。
寒冷地仕様車がおすすめです。窓が曇らない、サイドミラーがいつも綺麗になるなど、雪国に適した機能が付いています。
あとは、歩行者検知機能(自動ブレーキ)が付いていることでしょうか。雪の日は歩行者も視界が狭くなりがちで危険なので、この機能が搭載されていた方が安心です。
衝突安全性能はJNCAPで確認を【安全性編】
――安全面も気になります。衝突の際、軽SUVとコンパクトSUVでは安全性に差が出るものでしょうか?
いろんな要素があるので一概には言えませんが、車両重量が関わってきます。
例えば同じ速度で軽と普通車が正面衝突すると、やはり軽の方が損傷が大きいケースが多いですね。どのメーカーさんも生存スペースを確保するように努力を重ねていますが、圧倒的な重量の差をどうにかするのは物理的に難しいところがあります。
――車種ごとにだいぶ違ってきそうですよね。
そうですね。衝突安全性能に関しては、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)という第三者機関が自動車アセスメント(JNCAP)を行っており、インターネットで全車種のテスト結果を確認できるのでぜひ確認してみてください。
諸費用はこんなに違う【お金編①】
――購入となると金額の差は大きな要素になってきます。
まず車体価格に関して価格帯は次の通りです。
軽SUV | 150~180万円 |
---|---|
コンパクトSUV(ハイブリッド) | 250~300万円 |
そして、新車購入時の初年度費用をまとめてみました。軽SUVとコンパクトSUVでは、初年度の費用はさほど大きな差はないかもしれません。
新車購入時の初年度に支払う諸費用
税金 \ 車の種類 | A社の軽SUV | B社のコンパクトSUV (ハイブリッド車、1,500cc) |
---|---|---|
自動車税(自動車税種別割、軽自動車税種別割) ※毎年支払う |
0円 (初年度) |
2,500円 (初年度) |
自動車重量税 | 3,700~9,900円 | 免税(0円) |
環境性能割 | 0~30,000円 | 免税(0円) |
自動車リサイクル税 | 7,140円 | 10,470円 |
自賠責保険 | 27,330円 | 27,180円 |
合計 | 38,170~74,370円 | 40,150円 |
※これ以外に手数料がかかる場合があります。
※参考車両の試算となります。
年間維持費は?【お金編②】
――税金は違ってきますよね。
毎年支払う自動車税(自動車税種別割、軽自動車税種別割)は軽SUVが一律10,800円なのに対し、コンパクトSUVは仮に排気量1,500ccでは30,500円なので、年間2万円くらいずつ変わってきますね。
――税金以外の維持費でも違ってきますか?
そうですね。タイヤ代は軽SUVの方が安くなる反面、ガソリン代の方はコンパクトSUVのハイブリッドの方に軍配が上がります。順に説明しますね。
1 タイヤ代
新潟では冬季はタイヤを履き替えるので、2種類のタイヤが必要ですよね。
軽SUVの場合はタイヤサイズが小さく14~15インチぐらいがメインです。それに対してコンパクトSUVは17~18インチで、サイズが大きくなれば値段も高くなります。タイヤ1本あたりで2倍くらい価格差がある場合もあるので、大きな差になると言えます。
2 ガソリン代
ガソリン代は燃費が大きく関わってきます。実在する車種をモデルにして以下の条件で比較してみました。
ガソリン代 \ 車の種類 | A社の軽SUV 燃費20.8km/L |
B社のコンパクトSUV(ハイブリッド) 燃費26km/L |
2車両のガソリン代の差額 |
---|---|---|---|
年間9,000km走行した場合の1年分のガソリン代 | 69,231円 | 55,385円 | 13,846円 |
5年間分のガソリン代 (4.5万km) |
346,155円 | 276,925円 | 69,230円 |
※ガソリン代は160円・カタログ値で試算。
リッター約5キロの差で、これだけガソリン代は変わってきます。
軽SUVの方がコンパクトSUVのハイブリッドよりは燃費が悪くなってしまいますが、コンパクトSUVのガソリン車なら軽SUVとさほど変わらないくらいですかね。
3 任意保険代
SUVの場合は軽でもコンパクトでもさほど金額は変わりませんが、車に乗るなら任意保険は絶対に入ってください。
自分の体格に合うSUVを選ぼう
――では最後に、SUVを選ぶ際にビギナーがチェックすべきポイントを教えてください。
SUVに限った話じゃない部分もありますが、ポイントは3つあります。
1 シートに座って運転ポジションをチェック(体格、調整機能)
購入検討する際は必ず試乗して運転席のシートを合わせて、視界を確保できるか、死角がないかをチェックしてみてください。また、最低地上高が高い車種の場合はサイドミラーのすぐ下など、自分に近い位置の下は見えにくくなる傾向にあります。無理なく安全に運転できるか確認してみましょう。
2 運転支援機能(車庫入れサポート、など自分の弱点に応じて)
免許取り立ての頃は車庫入れが苦手な方も多いと思いますが、今ではサポート機能付きの車がたくさんあります。必要に応じて、自分の弱点に合う運転支援機能があるかどうかをチェックしましょう。
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3 荷物の積載量(普段何人で乗るか、どんなものを積むか)
軽SUVとコンパクトSUVの大きな違いとして、荷物の積載量があります。例えば、軽SUVに4人乗った場合は最小限の荷物しか積めません。車の用途や自分のライフスタイルを考えた上で選んでほしいです。
――ありがとうございます!
最終的には、自分の好みとかピンときたデザインで選んでいいと思います。やっぱり駐車場にあるのを見ただけでなんだかワクワクするような車に乗りたいですよね。
今お伝えしたことも購入時の要素として知っておいてもらいつつ、あなたに合った素敵な車に出会えることを願っています!