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わが子を守るチャイルドシートの適切な選び方と装着方法を知っておこう

鈴木長月
イラスト
ひらのんさ
UPDATE
2023/02/06/
子どもの成長にあったチャイルドシート選びを

「出産」は日々の暮らしがガラリと変わる一大イベント。家族が増えるこの機会に合わせてカーライフを一新したいと考えている方も多いことでしょう。
その車以外にも大切なのが、法律により装着が義務づけられているチャイルドシート。子どもの命を守る必須アイテムです。そこで今回は、自動車生活ジャーナリストで認定チャイルドシート指導員の資格を持つ加藤久美子さんに選び方のコツと正しい使用法を聞きました。

【話を聞く人】
新潟県内在住の高橋さんご夫婦。第一子が生まれるタイミングでチャイルドシートの購入を検討しているが、何を基準に選ぶべきかよくわからず困っている。

高橋さんご夫婦

まずは「Eマーク」があるかどうかをチェック

これから子どもが生まれるので、チャイルドシートの購入を検討しているのですが、種類がたくさんありすぎて、正直どれを選べばいいかわからなくて……。

高橋さんご夫婦高橋家

そうですよね。チャイルドシートは育児用品のイメージが強いですが、厳密には「自動車部品」のひとつなんです。そのため、自動車と同様、国土交通省の定める厳格な安全基準が存在します。裏を返せば、それに適合していない製品は一般への流通自体ができない決まりになっており、現行モデルを新品で買うぶんには安全基準についてはそこまで神経質になることはないですよ。

加藤さん加藤さん

その中でもいろんな基準がありますよね。ちょっと調べただけでも、「ECE」や「FMVSS」みたいな横文字がいっぱい。いったいどれを信じればいいのでしょう?

高橋さんご夫婦高橋家

まず大前提として、基準に適合しているものにはすべて、製品の見やすい場所に「Eマーク」と呼ばれる認証マークがついています。これは国連の欧州経済委員会が提示する「ECE」基準を満たす製品であることを示しています。また、「FMVSS」は北米基準の安全表示に使われていましたが、日本国内では2012年7月1日以降、ECEに統一されています。ただし、2点式シートベルト仕様の古いクルマの場合はFMVSS基準でも問題ありません。

加藤さん加藤さん
Eマーク例

安全基準を満たしたチャイルドシートには必ずEマークが添付されているので確認を。

車との装着方法も注意。今ならISOFIXほぼ一択

ISOFIXの装着イメージ

ISOFIXは、車体の後部座席についているコネクタ(赤丸部分)を使って固定するチャイルドシートの国際標準規格。国内では2012年7月以降発売のすべての乗用車に標準装備が義務づけられている。

Eマークが付いているものが前提条件なのはよくわかりました。ただ、今のチャイルドシートの基準もまた規格が変わるとか……!?

高橋さんご夫婦高橋家

そうなんです。いわゆるEマーク、ECEに準拠している点は変わりません。認証マーク内の「R+数字」をご確認ください。これは規則番号と言って現行は子どもの体重をベースにした「R44」か、もしくは身長をベースにした「R129」がほとんどです。
この基準が2023年9月1日からはR129基準だけになります。
R129は前方・後方に加えて、側面からの衝突試験が新たに追加されるなど基準がさらに厳格化されました。
これまで認められていたシートベルトを使用した固定方法が除外され、ごく一部の例外を除き、より確実性の高い「ISOFIX」方式がほとんどを占めています。
また、最近増えてきている「i-Size」と呼ばれる認証マーク(下図)は、この「R129」に適合している製品であることを示しています。

加藤さん加藤さん

認証マーク「i-Size」

 

あと、悩んでいるのが、後方向きの「乳児専用タイプ」と、「乳幼児兼用タイプ」のどっちを選ぶかなんですが……。

高橋さんご夫婦高橋家

「乳児専用タイプ」の方は、シート本体が着脱できて赤ちゃんを乗せたまま持ち運びができたり、ベビーカーに取り付けられたりと、専用ならではの使い勝手のよさを考慮したものがたくさんありますよ。ただ、決して安い買い物ではありませんし、最近の兼用タイプは成長に合わせて後ろ向きと前向きと使えるものも増えてきていますから、そこはそれぞれのご家庭の事情に合わせて検討していただければと思います。
また、「子どもの顔を確認しながら運転できたほうが安心」と思う気持ちも十分わかるのですが、安全性を第一に考えるなら、背中側で衝撃を吸収できる「後ろ向き」使用の期間はできるだけ長いほうが理想です。4歳位まで後ろ向きで使える安全性の兼用タイプもあります。
独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)ではチャイルドシートの性能評価試験の結果をネットで公表しています。チャイルドシートの購入を検討する際は参考にしてみてください。

加藤さん加藤さん
独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)HP

独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)のチャイルドシートアセスメント検索一覧

冬場、上着を着せたまま乗せるのは危険!

子どもは防寒着を着せたままチャイルドシートに乗せないこと

チャイルドシートを選ぶ基準がやっとわかってきた気がします! 他に気をつけるべき・知っておくべきことはありますか?

高橋さんご夫婦高橋家

ISOFIXでいくら車への装着が容易で確実に装着できるようになったとしても、肝心の使用法が間違っていれば元も子もありません。また、樹脂製の本体が劣化していると十分な性能も得られませんから、各メーカーの定める5~10年の使用期限もしっかり守ってほしいです。販売店はもちろん、取り締まる立場の警察ですら「使い方が間違っていますよ」とわざわざ指摘はしてくれませんしね。

加藤さん加藤さん

具体的にはどういう点に気をつければ良いのでしょう? 「チャイルドシートは助手席で使わない方がいい」くらいはわかるのですが……。

高橋さんご夫婦高橋家

年齢に応じた装着の仕方を心がけてほしいですね。たとえば1歳近くになっても新生児用のインナークッションをつけたまま載せていたり、肩ベルトの位置を赤ちゃんの頃からまったく変えていなかったりするのは避けたいところです。
また、寒いシーズンによくある「防寒着を着せたままシートに乗せる」のも危険です。最近流行りのモコモコ素材のアウターやダウンジャケットなどは、体と肩ベルトの間に空間ができてしまって、万が一、事故に遭ったときに体がスルッと抜けてしまうなんてことも起こりえます。乳幼児をシートに乗せる際は、面倒でも必ず上着は一度脱がせてできるだけ薄着で乗せるほうが安全です。寒ければ赤ちゃんの上から毛布を掛けてあげてください。

加藤さん加藤さん

そうなんですか! 新潟の冬は厳しいので、ちょっと近所まで買い物に行くだけなら車内も寒いですし、ついつい上着を着せたまま乗せてしまいそうです。でも、そういったリスクがあるのであれば正しく乗せてあげないと。

高橋さんご夫婦高橋家

はい、走行距離や時間の問題ではありません! チャイルドシートの着用が法制化されてすでに20年以上が経ちますので、かなり浸透はしてきたとはいえ、まだまだ意識には差もあります。痛ましい事故はいまもありますから、ぜひともそこは認識していただきたいところです。

加藤さん加藤さん

自動車メーカーの純正品を購入するのもアリ

日本でのチャイルドシートの着用義務は5歳までと聞きました。それ以降はどう考えればいいでしょうか。引き続きチャイルドシートを使うとか、学童用のジュニアシートなど、いろんな選択肢があるかとは思いますが。

高橋さんご夫婦高橋家

実は、「5歳まで」なのは日本だけで、欧州をはじめ先進諸国では12歳または身長150cmまで義務化されています。そもそもシートベルトは、身長145cm~150cm以上の大人を想定して、各種の安全評価がなされています。日本だと、小学校の高学年でもその身長に満たないお子さんがほとんどでしょうから、わが子の安全性を担保する意味でも小学校を卒業するぐらいまでは使用を推奨したいですね。

加藤さん加藤さん

最後に、「これを買っておけばまず間違いない」というオススメのメーカーなどはありますか?

高橋さんご夫婦高橋家

費用面では高くついてしまうかもしれませんが、メーカー各社の純正品をオプションでつけるというのがひとつの手です。ディーラーで買ったものであれば安全面でも信頼度が高く、アフターフォローもきちんとしてくれて、新車と同時購入する場合は自動車ローンにも組み込めますよ。

加藤さん加藤さん

なるほど! 子どもが生まれて、車に求める機能も変わってくるよなぁと二人で考えていたところなので、車の買い替えも視野に入れつつ検討してみます。今日はありがとうございました!

高橋さんご夫婦高橋家

【教えてくれた人】加藤久美子さん
自動車生活ジャーナリスト。学生時代はトヨタ系ディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ、運転技術と洗車技術を磨く。『日刊自動車新聞社』に入社後は「自動車年鑑」「輸入車ガイドブック」などの編集に携わり、その後フリーランスへ。さまざまな媒体への寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。「認定チャイルドシート指導員」として、車と子どもの安全に関する啓発活動も行っている。

加藤さん

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