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寒い部屋は身体によくないって本当? 安全な家づくりアドバイザーがこの冬、健康に過ごすための寒さ対策をご紹介

相澤良晃
イラスト
オオカミタホ
UPDATE
2022/02/22/
安全な家づくりアドバイザーがこの冬、健康に過ごすための寒さ対策をご紹介

冬は家の中が寒すぎる! 暖房を付けてもなかなか部屋が暖かくならないので、どうにかして部屋を暖かくしたいけど……どこから手を付ければいいの? そこで今回は、室温と健康の関係や今週末にもすぐできる寒さ対策、断熱リフォームについて、安全な家づくりアドバイザー・ヨシローさんに聞いてみました。

室温の低い家は、病気やケガのリスクが高まる

最近、私の母と一緒に住むようになりました。しかし母いわく、冷え込んでくるこの時期は、寒さが身にしみるらしく少し心配です……。これを機に何か対策をしたいと思っているのですが、家の中が寒いと、なにか身体に良くないことがあるのでしょうか?

中野さん中野さん

それは心配ですね。家の中が寒いと、以下のような事態にもなりかねません。
1. 血圧の上昇(高血圧)
2. 筋力や心身機能の低下
3. 浴槽内の事故の発生
4. 過活動膀胱(頻尿)

ヨシローさんヨシローさん

寒い部屋におこる可能性のある疾患

え、なんだか怖い言葉が並んでいますね。

中野さん中野さん

順番に説明していきましょう。
まず(1)「血圧の上昇」については、「室温が18℃以下になると高血圧のリスクが高まる」というデータがあります。実は日本人の約1/3にあたる4,300万人が高血圧とされ、これまでは、肥満、運動不足、ストレスなどが原因として挙げられてきました。しかし最近の研究では、それらに加え、「低すぎる室温」も高血圧のリスクを高める要因として指摘されています。

ヨシローさんヨシローさん

「低すぎる室温」が高血圧の原因になるなんて初耳でした。どのくらい血圧に影響があるんですか?

中野さん中野さん

血圧は「mmHg」(ミリメートル・エイチ・ジー)という単位で表され、一般的に140 mmHgを超えると高血圧と診断されます。室温10℃の家と20℃の家で比較実験をしたところ、30歳男女では、「10℃の家のほうが4 mmHgほど血圧が高かった」というデータが残っています。80歳男女になると、この差が10 mmHgまで大きくなります。
たかが4 mmHgと思われるかもしれませんが、厚生労働省は、「日本人の平均血圧を4 mmHg下げると、脳卒中で亡くなる方が年間1万人、冠動脈疾患で亡くなる方が5,000人減る」と試算しています。つまり、室温を上げたほうが、身体にかかる負担が減るということです。

ヨシローさんヨシローさん

なるほど〜。室温って、命に関わる問題なんですね!

中野さん中野さん

その通りです。あと部屋が寒いと、コタツや布団から出たくなくなりますよね。日常生活のちょっとした動きが減っていくことで徐々に、(2)「筋力や心身機能の低下」を招きます。それがもとになって、「リビングで転倒、足(もしくは股関節)を骨折して寝たきりに……」ということも考えられます。もし、階段から落ちて、打ち所が悪かったら……。

ヨシローさんヨシローさん

うわぁ、考えただけでも恐ろしい。冬は家族でコタツを囲むのが毎年の恒例になっているのですが、たしかに一回入るとなかなか出られなくなってしまうので他人事じゃないですね。

中野さん中野さん

また(3)「浴槽内の事故」も注意が必要です。部屋の温度が低いと、身体を温めるために42℃以上のお湯に浸かる「高温浴」をする方の割合が多くなります。しかし、その高温浴によって、体温の上昇による意識障害が引き起こされ、浴槽内での転倒を誘発します。その結果、溺死してしまうというケースが少なくありません。

ヨシローさんヨシローさん

私、45℃以上の熱~いお湯に浸かるのが好きでした。今度から気を付けます……。

中野さん中野さん

最後の(4)「過活動膀胱(頻尿)」は、潜在的な患者さんも含めると、日本では40歳以上の男女のうち約1,000万人が頻尿に悩んでいるとされています。もちろん、そのすべてが室温と関連しているというわけではありません。しかし、身体が冷えると交感神経の働きが強くなり、尿意がうながされることがわかっています。夜中、何度もトイレに起きてしまうという方は、それが原因かもしれません。夜中にトイレに行くことは、暗闇での転倒の可能性もありますから、寝ている間も室温を管理して、身体をなるべく冷やさないよう心がけてください。

ヨシローさんヨシローさん

寒い家には、何ひとついいことがないですね……。では、室温は何℃ぐらいに保てばいいんですか?

中野さん中野さん

18℃以上にしておきたいですね。世界保健機関(WHO)でも、2018年に発表した住まいと健康に関するガイドラインで、常時、室温を18℃以上に保つことを推奨しています。
若い方は、すぐにこのような身体の不調は現れないかもしれません。しかし、このような暮らしを続けていると、のちに健康被害がでる可能性もあるのです。

ヨシローさんヨシローさん

室温は家中どこでも18度以上をキープ

寒さ対策でリフォームを考えるなら、窓を優先に

ところで、その健康被害が起きやすい家の特徴ってあるのでしょうか。寒さ対策や、将来のリフォームも見据えて聞いておきたいです!

中野さん中野さん

そうですね、断熱性能が低い家は、いくら暖房を使用しても温めた空気がどんどん外に出ていってしまうので改善が必要です。

ヨシローさんヨシローさん

寒い家は断熱性に問題があるのですね。

中野さん中野さん

その可能性が高いと思います。もし、最初に手を付けるとしたらまずは「窓」からとりかかるのが良いですよ。冬場だと、室温の50%が窓から逃げていくとされています。ですから、窓の断熱性をあげるのが、もっとも効率的です。

ヨシローさんヨシローさん

え、50%も!?

中野さん中野さん

窓の具体的なリフォーム方法としては、以下のようなものがあります。

ヨシローさんヨシローさん

・窓の枚数を増やす
今ある窓の内側にもう一つ窓を設置し二重窓にすることで、今ある窓と内窓との間に空気層ができ断熱性能がアップ。

・窓ガラス
「シングルガラス」の場合は、2枚ガラスの間に空気層が設けられた「ペアガラス」に。

・サッシ(窓枠)
一般的なサッシはアルミ製が多い。しかし、アルミは熱伝導率が高く、熱が外に逃げやすいので樹脂製の窓枠に変えることで、断熱性を向上させることが可能。

窓だけでこんなに種類があるんですね。でも、もう今季のリフォームには間に合わなそう……。

中野さん中野さん

では、自分で窓辺の断熱対策をしてみてはどうでしょうか? たとえば「ハニカム型の断熱ブラインド」は、ハチの巣状になったブラインド型のスクリーンで、空気の層が窓から室内の熱が逃げるのを防いでくれます。

ヨシローさんヨシローさん
ハニカム型の断熱ブラインド

実際に、ヨシローさん家にもこのようなハニカム型の断熱ブラインドが設置されています。

それよりも安価なのが、「中空ポリカーボネート」。ダンボールのような形状をした空気層のある板で、これを内窓として取り付けることで、断熱性能がアップします。ホームセンターなどで売られているので、DIYを楽しむつもりで試してみてはどうですか?

ヨシローさんヨシローさん

すぐ、夫にやってもらいます!

中野さん中野さん

また、他の断熱リフォームとしては、壁や床、屋根に断熱材を充填したり、パネルを貼ったりという方法も考えられますが、いずれも壁や床をはがしたりと大規模な工事になるので、窓が終わってからでいいと思います。
「外壁や屋根の塗装によって手軽に断熱性能が上がる」という商品もありますが、個人的にはあまりおすすめできません。窓の断熱性を上げることを最優先してください。

ヨシローさんヨシローさん

ヨシローさんがおすすめする、あったかい部屋のつくりかた

まずは断熱性を上げることが重要なんですね……。

中野さん中野さん

ただ、断熱性能が向上した自宅は、いわゆる土台が整った状態です。断熱性能が上がって熱が逃げにくくなった家で、どのように部屋を暖めていくかがポイントになります。僕が日頃、安全で快適に暮らすために実践していることを紹介しますね。

ヨシローさんヨシローさん

・エアコンの暖房を24時間稼働
―前述のとおり、世界保健機関(WHO)が推奨する理想の室温は18℃以上です。暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる性質があるので2階建ての自宅では、1階のリビングは23℃、2階の寝室は18℃に設定し、計2台のエアコンを24時間連日稼働。結果、室温が20℃を下回ることはほとんどありませんでした。

・各部屋のドアを開けておく
―血圧が乱高下したり、脈拍が変動したりする「ヒートショック」は居室間の温度差が原因で引き起こります。各部屋のドアを開けておき、居室間の温度差を5℃以下にするのが望ましいです。

・家の各所に温度計を設置
―エアコンの設定温度や体感は正確ではありません。リビングや寝室、トイレ、洗面所など、頻繁に使うところに温度計を設置し、温度計で実測するのがおすすめですよ。

エアコンを24時間……! それだと、電気代がすごいことになりませんか?あと環境的にも気になります……。

中野さん中野さん

断熱性能が高い家は一般的な住宅よりも消費電力が抑えられるので、電気を作る際に排出される二酸化炭素の量も減り、結果的に電気代だけでなく、環境面にも配慮された住宅になりますよ。
ただ、エアコンは経年変化によりエネルギー効率が落ちてしまうものなので、一度、この機会に自宅のエアコンをチェックしてみるのも良いかもしれませんね。

ヨシローさんヨシローさん
しんきゅうさん

しんきゅうさん 環境省が提供する省エネ製品に買い替えることで、どの程度の省エネ効果が見込めるかがシミュレーションできるサイト。エアコンのほか、テレビ・冷蔵庫・照明などの電化製品も比較できます。

最後に、今季リフォームなしでもできる寒さ対策って何かあったりしますか? 普段生活していると、特に足元がすごく寒く感じてしまうので……。

中野さん中野さん

まず、エアコンの送風を下向きにしてみてください。それでもだめだったら、サーキュレーターを天井に向けて回してみてください。前述したように、床側には窓から入ってきた冷たい空気が、天井側にはエアコンから放出された暖かい空気が溜まっているので、それを循環させてあげることが大切です。

ヨシローさんヨシローさん

サーキュレーターはリビングのどこに置くのが効果的なんですか?

中野さん中野さん

エアコンから遠いところに置くと良いでしょう。暖かい空気は軽いのでエアコンと反対側の天井に溜まりがちです。それをサーキュレーターの風でかき混ぜる。また、床や壁が冷たいと感じるのであれば、やはり24時間エアコンをつけっぱなしにして、常に温めておくことをおすすめします。
人間の体感温度は「(室温+床・壁の温度)÷2」と言われています。たとえば、室温が20℃で床・壁の温度が10℃だとしたら、体感温度は15℃になります。一方、室温が18℃でも床・壁の温度が16℃なら、体感温度は17℃になるため前者よりも体感温度は高く、快適に感じます。そのために24時間室内を温めておいて、室温と床・壁の温度差を小さくしておくことがおすすめです。

ヨシローさんヨシローさん

健康はプライスレス。早めのリフォームを

室温って、健康や快適性に大きく影響するんですね〜。

中野さん中野さん

「健康」は、「お金」には変えられないものです。断熱リフォームに関しては国から補助金も出ますし、住宅リフォーム専用のローンを用意している金融機関もあります。もし返済プランを無理なく立てられるのなら、うまく活用して、早めに省エネ性能、断熱性能を上げていただいて、「健康に暮らせる家」に蘇らせていただきたいですね。

ヨシローさんヨシローさん

来年の冬に向けて、さっそくリフォームの準備を進めていきます! ありがとうございました!

中野さん中野さん

【登場人物】

【教えてくれた人】安全な家づくりアドバイザー・ヨシローさん
作業療法士としての経験を生かし、病気を予防するライフスタイル、住む人が安心できる家づくりの方法をYouTubeやSNS、ブログなどで発信。
住宅会社の顧問として世代関係なく安心・安全に住み続ける家にするための「安全持続性能」をアドバイス。自身は2016年に注文住宅を新築し、妻と3人の子どもと暮らす。
https://www.yoshironoie.com/

ヨシローさん

【話を聞く人】中野さん
一軒家に夫と中学生の子どもと3人で暮らしていたが、最近、母も一緒に住みはじめたそう。しかし母いわく、冬は寒さが身にしみるらしく、改めて自宅の寒さが気になるように。両親が高齢だということもあり、何か対策をしたいと思っているのだが、何から手を付けたら良いのか……。

中野さん

第四北越銀行の

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