近年、住宅を建てる際によく耳にするZEH(ゼッチ)。中でも、新潟県で推奨されているのが、寒冷地に特化した雪国型ZEHです。
そこで、コストや機能面のメリット、注意点について、新潟ファイナンシャルデザイン代表FPプランナーの木村孝幸さんに解説いただきました。
雪国型と従来型、同じZEHで何がどう違う?
――そもそもZEHとはどのようなものでしょうか?
ZEH(net Zero Energy House)とは、年間のエネルギー収支をゼロとすることを目指した住宅のこと。高断熱・高気密の構造やエネルギー効率の高い設備によってエネルギー消費を抑え、さらに太陽光発電などで消費エネルギーをまかない、収支をゼロにするのが特徴です。それによって、光熱費を節約することができるのがZEHのメリットだと言われています。
――寒冷地に特化した「雪国型ZEH」について教えてください。
「雪国型ZEH」は、雪が多い新潟県の気候にあわせた県独自の制度です。一般的なZEHよりも基準が厳しく設定されている分、気密性や断熱性能が非常に高くなっています。
設備面では通常のZEHよりもさらに高効率な設備が求められます。例えば、性能が高い、いわゆる「高効率エアコン」は、通常の場合は初期費用約15万円であるのに対し、雪国型ZEHで求められるものは25万円ほど。性能が高い分、省エネとなりランニングコストは安くなります。
また、太陽光発電を設置可能な場合は、原則導入することになっています。
――雪国型ZEHの方がより省エネできるということでしょうか?
はい、その通りです。雪国型ZEHは、通常のZEHよりも気密性や断熱性能を上げることによって、エアコンや暖房の効率を良くしているのが特徴です。
――気密性・断熱性が高いと、実際の住み心地も良さそうですね。
おっしゃる通り、雪国型ZEHは少ないエネルギーで家中を暖かくできるので、住み心地は良いでしょう。
脱衣所やトイレなど、部屋ごとの温度差が小さくなるので、ZEHではない一般住宅と比較してヒートショックを防止しやすく、住む人の健康にもつながると言われています。
――実際、雪国型ZEHを選択するケースは増えてきているのでしょうか?
あくまで私自身の感覚ですが、新潟県内で新築される方の2人に1人は、ZEHに関心を示されます。ここ2~3年は光熱費が上がっているせいか、光熱費などをシミュレーションしながら、高効率設備をどこまで設置するかを検討される方が多いように思います。
また、ハウスメーカーの標準仕様や建売住宅がZEHになっているケースもあり、以前より一般的になってきていると感じています。
金銭面のメリットは自治体や国の補助が受けられること
――工事費や光熱費について、雪国型ZEHと通常のZEHの違いを教えてください。
雪国型ZEHの中でももっとも基本的なG1グレードの場合、断熱工事費に絞って言うとすれば、通常の住宅と比べて約46万円、従来のZEH住宅と比べると約21万円の増額になると見込まれています。
ただし、雪国型ZEHは年間で約8万~15万円の光熱費の節約効果があるため、断熱工事費は5年程度で回収できる見込みです。G1グレードなら、従来のZEHと比較しても、工事費用の回収年数に大きな差は生じないと考えて差し支えないでしょう。
――雪国型ZEHは補助金も受けられるって本当ですか?
はい、実際に新潟県では「新潟県雪国型ZEH等導入促進補助金」があります。新潟県内で雪国型ZEH住宅を新築する方や設備を導入する方が対象です。
補助率・補助限度額(表) | ||
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区分 | 補助率 | 補助上限額 |
雪国型ZEH | 定額(650,000円) | 650,000円 |
太陽光発電設備 | 定額(1kW当たり70,000円) | 315,000円(4.5kW相当) |
蓄電池 | 補助対象経費の実支出額の3分の1 | 250,000円(5kWh相当) |
地中熱設備 | 補助対象経費の実支出額の3分の2 | 1,500,000円 |
ただし、すべての補助金を受けられるわけではなく、決められた組み合わせの中から選んで補助を受けることが可能です。なお、決められた組み合わせや申請受付期間については新潟県ホームページをご確認ください。
――新潟県内の各自治体でも補助金制度があるのでしょうか?
県内の自治体では「新潟県雪国型ZEH等導入促進補助金」の補助金利用者に対し、併用可能な補助金を設定している場合もありますが、申請受付状況によっては利用できない可能性もあるので、詳細は各自治体に直接確認しておくのが賢明です。
また、新潟県のホームページにて補助金併用が可能な自治体の一覧が、随時更新されています。下の表はあくまでその一部となりますが、ぜひチェックしてみてください。
自治体 | 補助金制度 | 補助金の額 |
---|---|---|
燕市 | 燕市脱炭素住宅推進事業補助金 | ・県の交付決定額×100分の30 ・上限額30万円 |
糸魚川市 | 糸魚川市省エネ住宅認定制度 | ・30万円 |
上越市 | 上越市脱炭素住宅推進補助金 | ・国・県の補助金の交付確定額×100分の30 ・上限額30万円 |
魚沼市 | 魚沼市雪国型ZEH等導入促進補助金 | ・新潟県版雪国型ZEH住宅:30万円(定額) ・ZEH、ZEH+:20万円(定額) |
――国が実施しているZEH等の省エネ住宅に使える補助事業についても知っておいた方がいいですよね。
そうですね。国が実施している補助事業としては「ZEH支援事業」と「子育てエコホーム支援事業」があります。
ただし注意したいのが、ZEH支援事業と子育てエコホーム支援事業は併用できない点。また、子育てエコホーム支援事業には子どもの有無や年齢などの条件があります。対象者に該当しない場合は、ZEH支援事業の活用を検討しましょう。
ZEH支援事業 | 子育てエコホーム支援事業 | |
---|---|---|
補助内容 | ・ZEH基準住宅:上限55万円 ・ZEH+:上限100万円 |
・ZEH水準住宅:上限80万円 |
対象者 | ・新築戸建住宅を建築・購入する個人 ・新築戸建住宅の販売者となる法人 |
・子育て世帯:申請時に子を有する世帯 (子は2023年4月1日時点で18歳未満) ・若者夫婦世帯:申請時に夫婦である世帯(2023年4月1日時点でいずれかが39歳以下) |
――ちなみに、補助金の手続きは、誰が行うものなのでしょうか?
書類の書き方や計算などが複雑なので、基本的には施工業者が手続きを行います。万一、慣れていない業者だと申請が間に合わずに、補助金が使えないケースも見受けられます。そうなると、初期費用の増額分が全額自己負担になってしまうので注意が必要です。
雪国型ZEHにするならまずは金融機関で相談を
――雪国型ZEHの住宅を建てる際、金融機関ではどのようなサポートを受けられるのでしょうか?
近年、多くの金融機関で、ZEH住宅向けの優遇プランが増えてきました。
また、雪国型ZEHは通常の住宅よりも建築コストが高くなる傾向がありますが、自分の口座のある金融機関なら、収入や支出を踏まえた返済計画が立てやすくなるので、「家を建てよう」と決めたら、相談してみることをおすすめします。
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――雪国型ZEHで住宅ローンを組む場合、なにか心得ておくことはありますか?
初期費用を考慮して資金計画を組むことが大切です。高効率設備の導入費用を合わせると、性能の度合いにもよりますが初期費用は省エネ基準住宅よりZEHであれば25万円程度、雪国型ZEH推奨性能を備えると350万円程度上がる可能性があります。この場合は暮らし始めてから冷暖房費が削減されていくので、どちらがいいか検討する際は住んでからのシミュレーションもしっかり確認しましょう。
――最後に、これから家を建てる方にアドバイスをお願いします。
まずは「雪国型ZEH住宅」にするかどうかを決めたら、雪国型ZEH住宅の実績が豊富な建築会社を選ぶといいでしょう。たとえば目先のデザインだけで決めてしまうと、結果的に手続きに不慣れな業者で手続きが間に合わなかったというケースも実際にありますから。
――参考になります……! 雪国型ZEHに関して、ほかにおさえておくべきことはありますか?
確実な情報を早めに入手しておくことが何よりも大切です。新潟県の公式ホームページが一番詳しく書かれているので、ここは欠かさずチェックしておきましょう。これに加え、できれば自分が住んでいる自治体の関連サイトを定期的に見ておくのが賢明です。
Webサイト | 提供情報 |
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新潟県ホームページ | ・雪国型ZEHのエネルギー推奨性能 ・補助・支援制度 ・住宅ローン一覧 ・動画・リーフレットなど |
2050新潟カーボンゼロチャレンジ | ・新潟県脱炭素ポータルサイトについて ・にいがたゼロチャレ30について ・各年度ごとに取り組み |
新潟県雪国型ZEH等導入促進補助金 | ・雪国版ZEHの基本情報 ・補助金支援制度など |
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