子どもが生まれ、初めての体験でいっぱいの中、あっという間にやってくるのが保育園の入園や小学校への入学。そんな中で大変だと聞くのが「保活」や「小1の壁」ですが、いったいどんな準備をして備えたら良いのでしょうか。また教育費はどのくらいかかるのかも気になります。自身も子育て経験があるファイナンシャル・プランナーの前田菜緒さんに、新潟の状況も含め伺いました。
初めての保育園に小学校……入園・入学に際しどんなことを押さえておくべき?
育休期間の終わりが近づくと、本格的に保育園探しがスタートします。保育園に入れない待機児童がたびたび話題に上がりますが、現状はどうなっているのでしょう。また、近からずも遠からずな小学校入学に際し、悩む人の多い「小1の壁」にはどのように備えたら良いのでしょうか。新潟市の状況も含めご紹介します。
「保活」って何をするの? 保活の進め方は?
「保活」とは、保育園を含めた保育施設に子どもを入れるために保護者が保育園探しをする活動のこと。 近年は共働き世帯が増えたことで、一時期、保育園に入れない待機児童が問題となっていました。保育園に入れなければ仕事復帰は困難となります。そういった生活の不安から、確実に子どもを入園させられるよう入念な準備を行うことへの関心が高まっていったのです。
なお現在は子育て支援が進み、待機児童問題は改善されています。令和6年4月1日現在、新潟市の待機児童数は0人となっており、保護者が安心して子どもを預けられる状況となっています。
保育施設の種類はいろいろ
保活を始めるためにはまず、預け先となる保育施設の種類と概要を知っておくことが肝要です。保育施設には大きく分けて、国が定めた基準を満たし自治体の認可を受けている「認可保育所等」と認可を受けていない「認可外保育施設」があります。
「認可保育所等」には保育所の他に、保育所と幼稚園の機能や特長を併せ持つ「認定こども園」、保育所より少人数の単位で、0~2歳の子どもを保育する「地域型保育事業」があります。施設により申し込み方法や受付期間、利用条件(保護者の就労状況や、子どもの年齢など)が異なるので注意が必要です。
名称 | 対象年齢 | 利用条件 | 利用時間(目安) |
---|---|---|---|
保育所 | 0〜5歳児 | 保護者が就労などにより 家庭で保育できない |
夕方まで ※園により延長保育を実施 |
認定子ども園 | 0〜2歳児 | 保護者が就労などにより 家庭で保育できない |
夕方まで ※園により延長保育を実施 |
3〜5歳児 | 制限なし | 昼過ぎ・夕方まで ※園により延長保育を実施 |
|
地域型保育 | 0〜2歳児 | 保護者が就労などにより 家庭で保育できない |
夕方まで ※施設園により延長保育を実施 |
一方「認可外保育施設」は、都道府県の認可を受けていない施設を指し、保護者の就労状況によらずに利用できます。事業所内保育事業や居宅訪問型保育事業(ベビーシッター)、ベビーホテルなどが該当します。乳幼児の保育業務を目的としており、施設ごとに施設の目指す保育内容や対象年齢、利用時間などが異なります。
保活のスケジュール
保活をスムーズに進めるため、保活の流れも把握しておきましょう。保育園に入るまでに何をしておく必要があるのか、一緒に確認していきます。
ステップ1:情報収集・保育園の見学
保活は早めの情報収集につきます。具体的には自分が住んでいる(お子さんを預けたい)自治体のWebサイトをチェック。お子さんを預けられる施設の種類や自宅から通園可能な施設を確認します。さらに、それら施設の入園申し込み状況、年齢別待機児童数などを確認しましょう。
▶︎新潟市HP「保育園・幼稚園など 入園の申し込み」
多くの世帯が入園を希望する認可保育園は、児童の年齢によって利用できる施設が異なり、園の方針も様々です。希望の保育園がご家庭の方針や子どもの性格に合っているかどうかも確認しておきましょう。
利用できる施設について
子どもの年齢/保護者の状況 | 利用可能な施設 |
---|---|
0〜5歳児の児童で、保護者が就労などにより 家庭で保育できない場合 |
保育園・認定こども園(保育園機能) 地域型保育事業(2歳児まで) |
3〜5歳児の児童で、就学前の幼児期の 教育を希望する場合 |
幼稚園※・認定こども園(幼稚園機能) |
保育園の目星がついたら、申し込み前に施設の見学をしておくと安心です。中には見学をしないと入園できない保育園もありますし、子どもを預ける環境を事前に見ておくと、申し込み時の安心感も違います。
また併せて、勤務する会社の福利厚生制度も確認しておきましょう。近年は子育て支援に力を入れる企業も増えており、育児休業復帰後の勤務形態を柔軟に選べたり、子どもの病気や記念日の休暇制度が充実していたりと、仕事と育児を両立しやすい環境づくりが進められています。
ステップ2:申し込み準備・手続き
希望する保育園が決まったら申し込み手続きを行います。お住まいの自治体の役所やHPにて募集要項を入手し、保育園の申し込みに必要な申請書類の準備をします。書類が揃ったら役所や保育施設へ、郵送やオンラインなど提出先のルールに沿って提出をしましょう。
申し込み方法や必要な申請書類は各自治体によって異なるため各自確認が必要ですが、例えば新潟市では、第1希望の保育施設に入園申請書類を直接提出または郵送する必要があります。入園希望施設は第10希望まで申し込むことができるので、通園可能な複数の施設に申し込めば入園できる可能性が高くなります。
保育施設に入園を希望する場合の一般的なスケジュールをまとめましたので、こちらを参考に準備を進めるようにしましょう。
▶︎新潟市のスケジュールはこちらからご確認ください。
4月入園でなく途中からの入園を希望する場合も、基本的には4月入園の保活と進め方は同じです。ただし入園できる保育園は定員が空いている園に限られるため、自治体のHPなどで保育園の空き情報や受付期間を調べるようにしましょう。なお新潟市では、毎月1回途中入園の募集を行なっているようです。
参考:新潟市HP「(令和6年5月から令和7年3月)認可保育施設への年度途中入園について」
保活を上手に乗り越えるコツや知っておきたい情報
ここまでで「保活は難しくて大変そう!」と思った方がいるかもしれません。どんな保育施設があるのかわかっても、違いや選び方、入園のタイミングや申請方法まで、育児をしながらあれこれ調べるのは大変です。そこでそういった方に向け、保活を効率よく行うコツや役立つ情報を紹介します。
・市役所や区役所に相談する
情報収集をする際は、自分の力だけではなく、市役所や区役所などの行政を頼るのも効果的です。「保活は何から始めればいいのか」「住まい周辺の保育施設はどこか」など包括的な情報を教えてもらえるでしょう。
その上で、独自で子育て支援サービスを行なっている自治体もありますので、ぜひチェックしてみましょう。例えば新潟市では、「保育コンシェルジュ」というサービスがあります。入園や保育サービス等について情報提供を行う専門の相談員が、保護者の方の疑問や悩みに応じています。相談は予約制で、「新潟市オンライン申請システム(e-NIIGATA)」(事前登録必要)から24時間申請ができます。
参考:新潟市HP「保育コンシェルジュについて」
・ママ/パパ友や先輩ママ/パパなどに聞く
家が近所で兄弟がいる方や職場の同僚が利用している施設の様子を聞いてみましょう。Webサイトには書かれていない情報がわかり、イメージを持ちやすいです。
・保育園だけでなく、いざという時に頼れるサービスを知っておく
職場復職後も、お子さんが発熱や感染症などで保育施設に預けられなかったり、施設から急に呼び出されたりすることがあります。しかし共働きをしていると「急には仕事を休めない……」なんてこともあるのではないでしょうか。そんなピンチに利用できるのが下記のような施設やサービスです。利用に際しては事前登録や面談が必要だったり、サービスによっては利用料金がかかったりしますが、とても便利なサービスなのでチェックしておきましょう!
● 病児・病後児保育
病気(病児)や病気の回復期(病後児)にある子どもを預けられる
● 病児・病後児保育の送迎サービス
保護者が子どもを迎えに行くことができない時に、病児・病後児保育室の看護師等が迎えに行き、病児・病後児保育室に一時的に預けられる
● ファミリー・サポート・センター
地域内における子育ての手助けをしてほしい人と子育てのお手伝いをしたい人が、子育ての相互援助活動を行うもので、保育後の預かりや病児、病後児の預かり、送迎などの支援を受けられる(自治体によっては、病児、病後児の預かりを行っていない場合もあります)
● ベビーシッター
保護者の事情で子どもの保育ができない時に、自宅や民間の託児所に来て代わりに子どもの保育やお世話をしてもらえる
お住まいの地域によって、利用できるサービス・内容は異なります。自治体のHPや民間のサービスHPなどから各自調べておくようにしましょう。
なお新潟市では「病児・病後児保育」「病児・病後児保育の送迎サービス」「新潟市ファミリー・サポート・センター」といったサービスが提供されています。
共働き世帯を悩ます「小1の壁」とは?
続いて「小1の壁」について解説します。保育園は延長保育などで18、19時まで子どもを預けることができましたが、小学校に入学すると14時前後で下校になってしまいます。また、夏休みや冬休み、春休みといった長期間の休みがあるため、仕事との両立が難しくなってしまうのです。
PTA活動や保護者会、面談など、平日の昼に保護者が学校に行かなくてはいけない回数が増えることも、「小1の壁」として挙げられます。
小1の壁を乗り越える救世主「学童」「民間サービス」
このような「小1の壁」を解消する1つの解決策が「学童保育」です。新潟市では「新潟市ひまわりクラブ」という名称で運営されています。小学校の敷地内や他の場所に設置され、放課後から18時30分まで開設。土曜日や学校の臨時休業、長期休業(春・夏・冬休み)にも開設されます。
保護者は、夕方ごろに学童保育施設に迎えに行く必要があるので、アクセスが便利な施設を選ぶと負担がかかりません。申し込み方法や必要書類は自治体や施設によって異なるので、小学校から配布されるプリントや、ママ友パパ友からの情報を参考に学童施設を選びましょう。
行政が設置する学童保育以外に、「民間のサービス」を利用することもできます。最近は、英会話や学習サポートなどのサービスが人気ですが、施設によって料金が高額になることもあります。週1、2日と利用日数を選べるので、家庭のニーズに合わせて利用したいですね。
保育園や学童はどれくらいお金がかかる?
保育園や学童を利用するとどれくらいの費用が発生するのでしょうか。毎月のことなので気になる方も多いと思います。自治体や施設、保護者の状況により異なりますが、費用の目安として参考にしてください。
保育園・認定こども園の保育料
幼児教育・保育の無償化により3〜5歳で保育園・認定こども園に通園する場合は、保育料が無料となっています※。3歳児未満で利用する場合は自治体や年収(市町村民税所得割課税額)などにより料金が異なります。
※通園送迎費、給食費、行事費、延長保育料等は別途必要
ここでは参考として新潟市における、3歳児未満で利用する場合の例(令和6年4月現在)で具体的な金額をみてみましょう。
例1)夫・年収400万、妻・年収200万の世帯の場合の保育料目安
第1子の月額保育料(保育標準時間認定)・・・37,600円/月
例2)夫婦とも年収350万円の世帯の場合の保育料目安
第1子の月額保育料(保育標準時間認定)・・・43,000円/月
参考:新潟県HP「新潟市保育料等のお知らせ(令和6年4月)」
詳しくはお住まいの市町村のHPなどから確認するようにしましょう。新潟市の場合はこちらからもご確認いただけます。
学童保育の利用料
続いて学童保育の利用料です。行政・民間の両方を含めた料金の全国相場を見てみると、月額4,000円〜8,000円前後となるケースが多いようですが、子ども支援に力を入れている自治体もあり、負担額は自治体によって大きく差があります。
ここで一例として、新潟市の学童保育(行政運営)の月額利用料を紹介します。
新潟市の場合、月額8,400円+クラブ活動費(月額2,000円程度)が基準となっていますが、保護者の税額(前年度の両親の市民税所得割額の合計額)による減免制度があります。
先ほどの例1、2の場合、第1子の月額利用料の目安は5,550円になります。
免除区分と免除適用後の月額利用料
免除区分(両親の前年度市民税所得割額の合計額) | 第1子 | 第2子 | 第3子以降 |
---|---|---|---|
生活保護世帯 | 0円 | 0円 | 0円 |
市民税非課税世帯 | 2,300円 | 1,150円 | 0円 |
64,800円未満 | 3,450円 | 1,700円 | 0円 |
64,800円以上129,300円未満 | 4,600円 | 2,300円 | 0円 |
129,300円以上186,600円未満 | 5,550円 | 2,750円 | 0円 |
186,600円以上313,300円未満 | 6,500円 | 3,250円 | 0円 |
313,300円以上448,000円未満 | 7,450円 | 3,700円 | 0円 |
448,000円以上 | 8,400円 | 8,400円 | 8,400円 |
民間のサービスの場合、利用料は各施設で設定されているため、民間サービスの利用を検討している場合は確認しておくようにしましょう。ただし、利用料は基本的に行政が設置している学童保育よりも高くなる傾向にあります。
新潟市の民設放課後児童クラブ一覧はこちらからご確認いただけます。
子ども1人あたりの教育費はどれくらいかかる?
ここまで保育園や学童にかかる利用料について紹介してきましたが、自治体などからの補助もあり、思ったより負担は少ないと感じた方も多いのではないでしょうか。
しかし、教育資金は住宅資金、老後資金とともに「人生の三大資金」と呼ばれるように、子どもが大きくなるにつれ教育費の負担も増え、人生の中でも大きな出費となります。
そのため、子どもが小さい今のうちから教育費の全体像を把握し、準備をしておくようにしましょう。
▼子ども1人あたりの教育費
グラフを見るとお分かりの通り、教育費は大学になるとぐんと負担が増えます。また、高校3年生では受験費用も高額になりがちです。よって、教育資金の準備をするなら、0歳〜高校2年生までの間に準備しておくことをおすすめしています。一番お金のかかる大学入学時を安心して迎えるためにも、早めにコツコツと備えておきましょう!
▶︎教育資金はどうやって貯める?いつまでにどの程度教育費を貯めておけば良い?
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