「リフォームをしたいけれど、どこから手をつけたらいいかわからない」と悩む人は多いもの。リフォームの進め方や費用、失敗を防ぐコツや費用を抑える方法はあるのでしょうか?
気になるあれこれについて、リフォームの達人である山嵜さん・亀田さんに聞いてみました。
リフォームするなら何から考えるべき? 基本の心構えとは
――リフォームしようかなと思ったら、何から検討すべきでしょうか?
山嵜さん:まずは、リフォームの軸(ゴール)を明確にしましょう。
ゴールが曖昧だとそこに到達する適切な手段を選べず、到達したかどうかもわかりません。リフォームを通じて生活をどう変えたいのか、どう悩みを解消したいのか。各家庭のゴールを明確に持つことが大切です。
――やはり、家のどこかが壊れたり、古くなったりしたときにリフォームする人が多いのでしょうか?
亀田さん:そうですね。リフォームのきっかけは機器設備の故障や老朽化であることが多いです。
ただ、実際には単に故障した箇所を直すだけではなく「住まいをより良くしたい」という人が多く、リノベーションのようなリフォームが増えているように感じます。
――リフォームとリノベーションの違いって何でしょうか?
亀田さん:「リフォーム」には機器設備や特定の箇所を改修・改良する意味があり、部分的な改修工事を指すことがほとんどです。対して「リノベーション」には修復・刷新の意味があり、住まい全体をグレードアップする大がかりな工事を指すことが多いです。
山嵜さん:ただリフォームに求めるものは年々変わってきていますよね。ひと昔前のリフォームは手元資金で行うものでしたが、今のリフォームは生活を豊かにするためのもの。「海外旅行をするよりも、リフォームで暮らしを変えたほうが毎日ワクワクできてコスパが良い」という価値観の広がりを感じます。
だからこそ、リフォームの先にある理想の生活や解消したい悩み、課題を深掘りして、ぶれない軸(ゴール)を設定することが重要です。
リフォームを検討すべきタイミングと理想の進め方
――リフォームはどのような流れで進めればいいでしょうか?
山嵜さん:私が主宰するリフォなびでは、下記の進め方を推奨しています。
1. リフォームの軸(ゴール)を設定する
リフォームで解消したい悩みや課題、希望する生活、叶えたい目的などを明確にする
2. 希望の商品・理想の内装を選ぶ
ショールームやSNSでリフォーム後の理想の暮らしをイメージする
3. リフォーム会社選び・現地調査
1や2でまとめたことを業者に伝え、打合せをする
4. 見積・検討
最初に決めたリフォームの軸は盛り込まれているか?業者の説明は納得できるものか?などを確認する
5. 契約
契約書は必ず交わす
6. 工事
リフォーム箇所や業者によって着工までの期間や工期は異なるのでよく確認する
【一般的な着工までの期間】2週間~1カ月半程度
【一般的な工期の目安】数日~数週間程度(箇所によって異なる)
リフォーム箇所 | 工期 |
---|---|
キッチン | ・部分改修:1日~1週間 ・全体改修:2~3週間 |
トイレ | ・トイレタンク交換のみ:半日~1日 ・全体改修:3~5日 |
浴室 | ・浴槽交換のみ:1日 ・全体改修:1週間 |
リビング | ・壁・天井・床のクロス張替:2日~1週間 ・全体改修:1~3週間 |
7. 引き渡し
――リフォームに適したタイミングがあれば教えてください。
亀田さん:タイミングは人それぞれですが、一般的な目安として下記の3つがあります。
- 住宅の機器設備の耐用年数に合わせて行う
- 各家庭のライフステージや家族構成の変化に合わせて行う
- 商品の発展に合わせて行う(便利になった機器設備を使いたいなど)
例えば給湯器は8年~15年程度、外壁は10年~20年など、機器設備には耐用年数の目安があるため、その周期に沿ってリフォームしていく方法が一般的です。また、子どもの成長にあわせて間取りを変更する、高齢化によってバリアフリーリフォームを行う家庭もあります。
山嵜さん:各家庭で最適なタイミングは違うため、リフォームに絶対的な正解はないんですよ。
亀田さん:そうですね。そのため、弊社では段階的にリフォームする方法をおすすめしています。最初はトイレ、次に洗面所やキッチンというように、耐用年数や各家庭の事情に合わせて気になる箇所を少しずつ手を付けていくのです。
――えっ。リフォームって、一度にまとめてするものと思い込んでいました。
亀田さん:いえいえ、最初からすべて行う必要はありません。プチリフォームから始めて、リフォームの良さや流れを掴んでから全体リフォームに移行していけばいいんです。
――でも、建築業界は資材高騰や人材不足、法改正などで2025年以降はますます費用が高くなっていくと聞きました。少しでも早く済ませたほうがいいのでしょうか……?
山嵜さん:たしかに、業界的なトレンドとしては今後さらに値上がりすることが想定されています。いずれ予定しているリフォームであれば、少しでも早くしたほうが費用は抑えられるでしょう。
亀田さん:費用負担を抑えたい人は、費用が上がる前に契約をしておき、旧単価で資材を確保しておく方法もあります。
リフォーム内容の種類は? 費用の目安も確認しておこう
――主なリフォームの種類と費用の目安を教えてください。
山嵜さん:業者や選ぶ商品、メーカーによっても異なりますが、国土交通省の資料で主なリフォーム費用の目安が出ています。
部位別リフォーム費用(戸建)の目安

※費用は設備費、材料費と工事費込みの価格
※参考:国土交通省「軽微な工事(リフォーム工事等)に関する対応の検討」より「部位別リフォーム費用一覧」、「リフォーム減税制度」より「標準的な工事費用相当額」を元に作成
――いろんな種類があるんですね。ちなみに、最近のリフォーム工事で目立った傾向はありますか?
亀田さん:核家族化が進んでいるため、子どもの独立や親の介護などをきっかけにリフォームするケースは多いですね。一方で、能登の震災の際は耐震リフォームの問合せが増え、最近は国の補助金を活用した省エネ対策のリフォームも多いです。きっかけも工事内容も、年々多様化していますね。
リフォームで失敗したくない! 商品&業者選びのコツを紹介
――リフォームで失敗を防ぐためには、何に気を付けたらいいのでしょうか?
山嵜さん:ズバリ、業者選びです。
世の中の住宅リフォームの大半は税込500万円未満の「軽微な工事」に当たりますが、実はこの軽微な工事には建設業法の許可がいりません。つまり、「誰でもできる」ため、中には経験の浅い業者もいて、リフォーム業界は玉石混交です。価格や会社名だけで業者を選ぶと、ずさんな対応をされる可能性もあるので要注意です。
一方、システムキッチンや洗面台といった商品選びで失敗することは少ないですね。メーカーの提供商品には普及品・中級品・高級品という3つのグレードがありますが、一番安い普及品でも20年前の高級品に当たります。一番安い商品を選んでも、品質は十分保証されているんですよ。
――安い商品=質が低いわけではないんですね! では、良い業者さん探しのコツを教えてください。
亀田さん:私の経験上、社長自らが現場に出向き、顧客対応から施工まで行うような工務店は信頼性が高いですね。
【良い業者のポイント】
●同じ担当者が顧客対応から施工まで一貫して行っている
●建設業の許可を取得している
●官公庁や自治体の公的な補助・助成制度を利用している登録業者
例)住宅リフォーム事業者団体登録制度
●リフォームローンを併設している業者
亀田さん:自治体の補助制度は費用を抑えるうえでも重要なので、意外と見落とせないポイントですね。
山嵜さん:リフォームは新築と異なり、既存構造への対応や柔軟性が求められます。個々の担当者の経験やスキルで仕上がりが大きく左右する属人的な業務なので、口コミや実績をよく確認したり、実際にリフォームした人から紹介してもらったりするといいでしょう。
亀田さん:そういう点でも、最初のプチリフォームで業者の対応を見極めることが大切だと思います。
リフォームのお金が足りないかも! そんな時に頼れる方法
――リフォーム箇所によっては高額になりますし、住宅ローンを返済中の人もいますよね。リフォーム費用をうまく工面するコツ法はありますか?
亀田さん:もちろん、リフォームしたい箇所を絞り段階的に実施するという手もあります。しかし、一般的にはローンを活用するのが良いのではないでしょうか。今はローンにも様々な借り方があり、住宅ローン返済中の人は借り換え、その他の人はリフォームローンという方法があります。
- 他の住宅ローンに借り換えする場合
返済条件の見直しで返済額を軽減。銀行によっては、返済中の住宅ローンとリフォーム費用を一本化できる - リフォームローン(無担保)の場合
リフォーム費用のみ借り入れできる - リフォームローン(有担保)の場合
リフォームする建物を担保にして無担保型よりも高額な借り入れが可能。銀行によっては返済中の住宅ローンとリフォーム費用を一本化できる
――「返済中の住宅ローンとリフォーム費用を一本化」という方法もあるんですね! でも、毎月のローン返済負担が増えるのは厳しいかもしれません……。
亀田さん:条件を見直せば、逆に返済負担を減らすことも可能ですよ! 私のお客さまでも、住宅ローン返済中に借り換えをして、リフォーム費用500万円を用意した人がいます。その人は、返済期間の延長や金利の見直しで毎月の返済額が安くなりました。
――それはありがたいですね!
亀田さん:住宅ローンやリフォームローンは他のローンに比べて低金利で、商品によっては団体信用生命保険(団信)も付帯するので万が一の際も安心です。車や教育ローンなど金利が高いローンを先に返済し、代わりにリフォームローンを組んで世帯全体の返済負担を抑える方法もあります。
【その他、リフォームの負担を軽減するこんな方法も】
●住宅リフォームにおける減税制度を利用する
●国や自治体の補助制度を活用する
●介護保険法に基づく住宅改修費の支給制度(新潟県)を活用する
――実際、リフォームローンを活用する人は多いのでしょうか?
亀田さん:私のお客さまにはとても多いですよ。定年後で手元にまとまった退職金がある人でも「ローンなら万が一の保障(団信)があるし、借りたほうがいいよね」と。まとめて現金を払って貯蓄がたくさん減るよりも、ローンを組んだ方が心理的な抵抗が小さく、理想のリフォームをしやすいのでしょう。
山嵜さん:リフォームは生活を豊かにするものという考えが広がり、ローンに対する考え方も変わりましたよね。年齢を問わず、理想の暮らしを実現することは心身の健康に大きく影響するため、ローンや制度など、使えるものは積極的に活用していただくといいと思います。
【教えてくれた人】