マネーまるわかり

車中泊って楽しいの? 車選びのポイントや快適に過ごすコツを紹介

横田ちえ
イラスト
前田はんきち
UPDATE
2023/10/13/
車中泊する親子

アウトドア人気の高まりとともに注目されている車中泊。車で移動と宿泊の2つの役割を担うので、旅の可能性が大きく広がります。そこで今回は、車中泊歴約25年、クルマ旅専門家の稲垣朝則さんに、車選びのポイント、車中泊の楽しさや快適に過ごすためのコツを解説してもらいました。

専門家が熱弁! 車中泊のここがいい!

――まず、車中泊の魅力を教えてください。

車中泊の大きな魅力は、時間の制約がなくなり、行動範囲が広くなるので、旅行やアウトドアをより楽しめるようになることです。

旅行では、バスや電車などの公共交通機関、宿での食事やチェックインといった時間を気にしなくてはいけないですよね。車中泊にはそれらがありません。「この時間までにここに行かなきゃ」がないので、旅のプランも変更が利きやすく、自由度の高い旅を楽しめるのがいいところです。

また、仕事が終わってからなど夜のうちに出発すれば、日中の渋滞しやすい時間帯も避けられます。目的地の近くに車中泊することで、翌朝早くから楽しむ時間をたっぷりとれるので、サーフィンや釣り、山登りなどアウトドア系の趣味との相性がいいです。忙しい現役世代でも週末をうまく利用して出掛けられるのがいいところじゃないでしょうか。

――アウトドア系の趣味がある方には車中泊ってすごくいいんですね。

私自身も子どもたちとの初めての車中泊は、スキーを楽しむためでした。

金曜日の夜に車でスキー場に向かい、駐車場で電気毛布を入れて寝て、翌朝土曜日の営業開始から1日中滑りました。早朝はゲレンデが空いていて思いっきり滑れます。土曜に、もう1泊車内で寝て、日曜日は営業開始からゲレンデが混雑してくる11時頃まで滑って、帰りました。

また、車中泊は宿代を節約できるのがありがたいところです。家族4人で1泊2日した場合、ホテル泊と車中泊の費用を比較すると3倍くらい差が出たでしょうか。

子どもが中学生になるくらいまでは週末にスキーに行ったり、夏休みは2週間かけて北海道を巡ったりと家族で車中泊をたくさん楽しみました。今は夫婦2人で出かけています。という具合に、どんな年代になっても楽しめていますね。

北海道を車で旅する様子

車中泊できる車の選び方

――車はどう選べばいいのですか?

車中泊に適しているのは、シートを倒してフルフラットにできるタイプの車です。軽自動車、ワンボックスカー、セダン、ミニバン、SUVと全ての車種で、フルフラットになる仕様の車があるので、そういうタイプを選ぶといいです。車の大きさは車中泊をする人数に応じて選んでください。

また、シートを後ろにではなく前に倒して格納するタイプの車が◎。基本的に乗り心地を追求した車のシートは、体を支えてくれる凹凸があります。だから、シートを後ろに倒しても真っ平にならないんですよね。でも、シートを前に倒せるタイプなら座席の背面の平らな部分を使うので、段差は2センチから5センチと厚手のマットを敷いたらわからないくらいになります。

――車中泊というと、キャンピングカーを思い浮かべる人も多いかと思います。キャンピングカーと普通車との違いはなんですか?

キャンピングカーはナンバープレートの登録区分が違います。キャンピングカーは、「8ナンバー車(※)」で、それを取得するための様々な決まりをクリアしないといけません。

2022年4月から一部法律が変更され、審査基準はだいぶ緩和されましたが、例えば、車内で泊まれる設備がなかったり、車内で調理ができなかったりすると審査に通らず、キャンピングカー登録ができません。

※8ナンバー車…警察車両や救急車、消防車など特種用途自動車に与えられるナンバープレートがついた車のこと。特種用途以外ではキャンピングカーも8ナンバーが適用される。

――車中泊ができる車の車体のみ費用の目安を教えてください。

金額目安は下記の通りです。

・軽自動車 100万円台

・普通車ミニバン 200~600万円

・ノーマルのワンボックスカー 300~450万円

ワンボックスカーとミニバンの違い

ワンボックスカーとミニバンの違い

――なるほど。車を選ぶ上で気を付けるポイントはありますか?

車内を広く使えるようにと「居住性(車内の広さ)」を重視して選ぶと、高さがある車になります。しかし、そうすると走行時の風力抵抗が上がり、風で車が揺れやすくなるなど走行性能は低くなります。「居住性」と「走行性能」を両立するのはすごく難しいのです。だからこそ、車で何をしたいか、どこに行きたいか、目的を考えた上で選ぶことが大事です

頻繁に坂を上ったり、高速道路を走ったりと走行性能が必要な使い方をするなら、キャンピングカーと言われて多くの人が思い浮かべるような形のキャブコンバージョンや、大型のワンボックスカーだと結構苦しいかもしれないですね。

また、その車を日常使いするのか、それともセカンドカーとして持つのかを考えなくてはいけません。車の長さが5メートル以上のサイズになってくると、駐車場探しで困ることもあると思いますし、細い道では運転しづらいです。特に京都や奈良など歴史ある古い町へ行く場合は、出かける前に駐車場を調べてから行かないと駐車場探しで終わってしまうくらい苦労することもあります。

これらを考えると、ノーマルタイプのワンボックスカーくらいのサイズまでなら、日常使いもしやすいと思います。

車中泊で快適に過ごすコツ

――車中泊で快適に過ごすためのコツを教えてください。

できるだけ空間を広く使えるように道具をコンパクトにすることです。登山用の道具ならバーナーやテーブルなど折りたためるものが多く、軽量でコンパクトですので、おすすめですよ。

――初心者はまず何から揃えたらいいですか?

初心者はこの3つから揃えるといいでしょう。私はこれを「3種の神器」と呼んでいます。

1. 厚さ10センチのインフレーターマット(+電動エアーポンプ)
まず絶対必要なのは就寝時などに使用するマットです。空気とウレタンの二重構造で膨らませる「インフレーターマット」がおすすめです。使わないときは空気を抜いてコンパクトに収納できます。

フルフラットにできるタイプの車でも多少の段差は残ります。クッションなどの詰め物をして段差を解消するテクニックもありますが、その分荷物が増える要因になってしまいます。厚さ10センチのインフレーターマットを使えばクッション性があり多少の段差は吸収してくれるので、寝る体勢がだいぶ楽になります。

あとは、インフレーターマットの空気を入れるのに電動エアーポンプがあると便利です。2,000~3,000円でUSB充電できるタイプの性能のいいものがあるので、併せて用意しましょう。

注意点として、敷布団は車中泊に適していません。ダニが入る心配があるのと、すごく湿気を吸うので、敷布団ではなくマットを用意した方がいいでしょう。

2. ウインドウシェード
プライバシーを守るために、窓を覆うウインドウシェードは必需品です。家でいうカーテンですね。特に夜は車内で電気を付けると中の様子が外からまる見えなので、着替えたり寝たりするのに必須です。

窓のサイズは車ごとに違いますが、車中泊によく使われている人気車種ならメーカーの純正品以外にも適したサイズのものが販売されています。

3. 充電器
これは車中泊に限らずですが、シガーソケットからUSBでスマホにつなげられる充電器はあった方がいいですね。スマホでナビを使ったり、音楽を聴いたり、調べ物をしたりと何かと携帯電話などの充電が減るのであると安心です。

1泊2日の車中泊などでもう少し電気を使いたいなら、リチウムイオン電池搭載のポータブル電源があるといいです。

現在は200wh~5,000whまでの製品が販売されています。300whの容量があれば、パソコンの充電や扇風機の使用などに使えるので、普通車の1泊2日の旅で困ることもあまりないと思います。「長時間電気毛布を使う」となるなら、更に大きい容量のものがよいでしょう。

ただ、長期間で出かける場合は途中で充電する必要がありますので、ご注意を。

――3種の神器があれば、ひとまず最低限の寝泊まりができますね。

防災にも役立ちます。2018年に起きた大阪府北部地震の時は、私が住んでいる場所も停電断水になりました。その時には、駐車場にあるキャンピングカーで電気が使えてお湯を沸かしたり電子レンジを使ったりできたのですごく助かりました。

車中泊の注意点

――最後に、車中泊をする上で気を付けるべきことを教えてください。

車中泊のマナーとしてよく「エンジンをかけたまま寝るのはマナー違反」と言われることがあります。でも、もし夏場にエンジンを切ってエアコンを使わずに寝て熱中症になってしまったら大変ですよね。
そもそもは「熱中症になりそうな暑い時期には車中泊をしない」のがマナーだと思います。

――たしかに、命を危険にさらしてまで車中泊するのはいけませんね。

車中泊のやり方が分からなくなったときは、トラックの運転手を真似するといいです。もともと車中泊は、高速道路や駐車場のインフラが整ってきた1960年代に長距離輸送をするトラック運転手の間で始まった宿泊スタイルです。

トラック運転手は、車内で弁当を食べるけれど、車外に椅子やテーブルを広げて調理をしないですし、仮眠を取るために数時間停車するくらいで長期滞在することはないですよね。どう振るまうべきか迷ったときは「トラック運転手がしているか」を参考にするといいと思います。

車中泊は時間の制約を受けずに、週末をうまく使って自由度の高い旅を楽しめるのが魅力です。
ぜひ旅の選択肢の1つに加えてみてください。

【教えてくれた人】クルマ旅専門家 稲垣朝則さん
本格的に車中泊の旅を始めて約25年。ほぼ毎年北海道から九州まで日本を縦断し、既に「一筆書きの日本一周」も達成。年間の車中泊数は平均60泊、多い年は100泊を越える。車中泊クルマ旅の専門家として、『ミニバン車中泊バイブル』(マイナビ)、『車中泊の作法』(ソフトバンク新書)、『車中泊コースガイド』シリーズ(八重洲出版)など、これまでに20冊を越える著書をリリースし、車中泊に関連するドラマや自動車会社のウェブサイトの監修も行っている。
https://kurumatabi.net/

稲垣朝則さん

第四北越銀行の

マイカーローンとは

マイカーローン

詳しくはこちら

第四北越銀行の

マイカーローン

お申し込みはこちら